アメリカの歴史独立後

第二次世界大戦の原因となった「世界恐慌」とは?わかりやすく解説

フーヴァー政権の対応

当時の大統領は共和党のフーヴァーです。フーヴァーは株価の暴落や不景気は一時的なもので、放っておけば自然と回復すると考えました。市場に任せておけば、需要と供給のバランスがとりもどされ景気は回復するという考え方です。

フーヴァーは政府が企業や個人の経済活動に介入するべきではないとする自由放任主義の考えをもっていました。そのため、世界恐慌に対しても具体的な対応をしなかったのです。しかし、大恐慌はフーヴァーの想定をはるかに上回るものでした。

外国製品の輸入を制限して国内産業を保護する保護貿易政策やドイツの賠償金や第一次世界大戦でアメリカが貸していたお金の返済を1年間猶予するフーヴァー=モラトリアムを発表しましたがタイミングが遅すぎ、効果は限定的。各地に生まれた失業者のバラックは「フーヴァー村」と呼ばれ世界恐慌の対応が遅れた責任を追及されました。

ヨーロッパへの恐慌の拡大

第一次世界大戦後、世界最大の債権国で消費国でもあったアメリカの経済にヨーロッパ諸国は依存していきました。アメリカで起きた大恐慌はヨーロッパ経済も直撃。ヨーロッパでも失業者が街にあふれる事態となります。

特に、敗戦国であったドイツは深刻な影響を受けました。敗戦国のドイツはイギリス・フランスなどの連合国から巨額の賠償を請求されます。単独では支払いきれないドイツにアメリカが資本を投入。経済力を回復したドイツがイギリスやフランスに賠償を支払います。イギリス・フランスは得た賠償金をアメリカから借りた借金の返済にあてました。

世界恐慌でアメリカからの資金流入が途絶えたドイツはたちまち経済的な困難に直面します。ドイツでは3人に1人が失業する恐慌状態となりました。ドイツが賠償を支払えなくなるとイギリスやフランスもアメリカに借金を返せず、恐慌はヨーロッパを巻き込んでいったのです。

日本への影響

1920年代の日本はアメリカと異なり、恐慌に次ぐ恐慌の時代でした。第一次世界大戦の終結で訪れた戦後恐慌。1923年の関東大震災をきっかけに起きた震災恐慌。1927年、関東大震災で発生した支払い困難な震災手形が原因となって起きた金融恐慌などが連続して起きていたのです。

世界各国が大恐慌から自国産業を守るため、外国製品の輸入を制限する保護貿易を行いつつありました。その結果、日本企業の製品を海外で売ることが難しくなり業績が悪化。国内は失業者であふれかえることになります。この恐慌を昭和恐慌といいました。

加えて、アメリカが生糸輸入を激減させたため生糸産業が大打撃日本でも農業恐慌が発生したのです。

世界恐慌の影響

image by PIXTA / 28298710

瞬く間に世界各国を巻き込んだ大恐慌。各国はどのようにして対応したのでしょうか。アメリカでは公共事業を積極的に行うニューディール政策。イギリス・フランスは植民地を囲い込み国内産業を保護するブロック経済を実施します。公共事業を行うお金もなく、植民地も少ない国々ではファシズムが台頭しました。

各国の世界恐慌対策

アメリカでは世界恐慌での対応の悪さからフーヴァー大統領が選挙で敗北。民主党のフランクリン=ローズヴェルトが大統領に当選しました。ローズヴェルト大統領は市場に任せておくのではなく、政府が積極的に介入して雇用を作り失業者に職を与えようとします。

ローズヴェルト大統領の目玉政策はニューディール政策。ニューディル政策は銀行救済の法律や農産物の買い上げ、大規模な公共事業の実施などを柱とする総合的な経済対策です。特に、テネシー川流域開発公社(TVA)の設立では政府が積極的に公共事業を行い、失業者に仕事を与えようとしました。

イギリスやフランスは植民地と本国の結びつきを強化するブロック経済政策を実施。本国と植民地の間では関税をなくすなど貿易を盛んにする一方、外国企業に対しては高い関税をかけて自国の企業を保護します。

各国が対応に追われる中、世界恐慌の影響をあまり受けない国もありました。社会主義国のソ連です。ソ連は計画経済を実施して貿易にあまり依存していなかったため影響はほとんどありませんした。

ファシズムの台頭

第一次世界大戦の敗戦国のドイツや戦勝国ではあっても植民地が小さかったり経済的な基盤が弱い日本やイタリアなどは窮地に立たされました。

ドイツでは多額の賠償金を課したヴェルサイユ条約への反発からヴェルサイユ体制の破棄と再軍備を主張するヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の力が急速に拡大します。イタリアではムッソリーニが独裁政権を打ち立て、エチオピア侵攻をはかりました。日本は中国東北部にある満州への進出を強化します。

1931年、日本は満州事変によって満州国を建国。アメリカ・イギリス・フランスなどとの対立を深めました。これらの国々はイギリスやフランスのブロック経済、アメリカの保護貿易によってはじき出され経済的に苦しんだ点で共通しています。やがて、ドイツ・イタリア・日本は接近し三国同盟を結成。世界の再分割を要求して第二次世界大戦を引き起こしていくのです。

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