イギリスヨーロッパの歴史

「産業革命」って結局何が起きたの?経緯とその影響をわかりやすく解説

蒸気機関の実用化と織布生産の発展

イギリスでは16世紀から暖房用として石炭が使用されていました。石炭を掘るとき、地下水などがしみだしてくるので、炭鉱はつねに排水をする必要があったからです。

1708年、ニューコメンは蒸気の力で排水する機械を発明。1760年にはワットが蒸気機関を改良して実用化にこぎつけました。ワットは子供のころに鉄瓶のふたが蒸気で持ち上がるのを見て、蒸気の力に気づいたといいます。

ワットが蒸気機関を改良したことで炭鉱以外の場でも使用できるようになりました。カートライトは蒸気機関をつかって大量の布を織ることを思いつきます。そして、1785年にカートライトは蒸気機関を動力とした力織機を発明。

こうして、現在のわれわれがイメージする「機械がほとんど自動的に製品を作る」時代が始まりました。蒸気機関の発達は蒸気機関車や蒸気船の発明に繋がり、それまでの時代よりも早く、大量の物資の輸送が可能となります。蒸気機関の登場は社会のありかたも変えつつありました。

悲運の発明家たち

現代の私たちは発明=大金持ちといった連想をしがちですが、産業革命時代の発明家たちは幸福ではありませんでした。

飛び杼を発明したジョン=ケイは織布職人たちに「俺たちの仕事を奪った」と非難されます。これは、飛び杼のおかげで助手が不要になったからです。ジョン=ケイは裁判を起こされ、訴訟費用により破産。フランスに移住して貧困のうちにこの世を去りました。

ハーグリーヴズは「職人の仕事を奪う機械を壊せ!」というラダイト運動(機械打ちこわし)によって建てた工場を失い、裁判などにも苦しみます。アークライトもまた裁判と訴訟に苦しみました。彼の場合、近代工場のモデルとなった600人が働くマンチェスターの工場も焼失してしまいます。力織機を発明したカートライトも同様の運命をたどりました。

技術が発達すると職を失う人が現れます。現代もAIの発展で仕事がなくなるという不安がありますから、当時の職人たちの不安も理解できないわけではありません。とはいえ、発明家たちのその後はあまりに不遇でした。

産業革命の影響

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産業革命は社会に様々な変化を与えました。それまでの貴族・地主と農民・市民といった階級は資本家と労働者という二大階級に変化します。圧倒的な力を持つ資本家と弱い立場の労働者はしばしば対立して労働問題を引き起こしました。産業革命によって始まった社会の変化と発生した問題についてみてみましょう。

資本家と労働者

産業革命がおきると、都市では労働者が不足し始めました。いくら工場を建てて機械を買っても、動かす人間が必要だったからです。農村で働く場所がない人々は都市に向かって集中します。マンチェスターの人口は1800年から1890年にかけて5倍以上に膨れ上がりました。資本家は街に集まった労働者を安い賃金でかき集めます

都市労働者の生活は厳しいものでした。ロンドンの一角にはゴミであふれる不衛生なスラムが出現。汚れた水を使っていたことから伝染病も絶えません。それでも労働者が足りなくなると資本家は女性や子供も雇います。当時の記録によると、ある少年は一日19時間もの労働をさせられていたとのこと。

さすがに、これはやりすぎだとなりイギリスでは未成年者の就労を制限する工場法が制定されました。労働者の側も自分たちを守るために労働組合を結成。さらに、労働者の地位向上・解放を目指す社会主義運動も起こるようになりました。

産業革命の広がり

イギリスで起きた産業革命はヨーロッパ各地に広がります。もっともはやく伝わったのはベルギーでした。伝統的な毛織物工業で蓄えたと富や豊富な鉄・石炭資源があったからです。

これにフランスや当時イギリスの植民地だったアメリカが続きます。特に、アメリカの資本家たちの成長はイギリスからの独立の動きを加速させ、アメリカ独立戦争の原因の一つとなりました。1840年代のドイツでの産業革命はドイツ国内統一の動きを加速させます。

一方、工業化が遅れたのがロシアでした。ロシアはフランスから多額の借金をして工業化を推し進めます。そして、同じころに日本も産業革命を迎えました。日本では政府が中心となり産業を興す殖産興業政策を実施。日清戦争の前後に軽工業、日露戦争の前後に重工業が発達し列強の仲間入りを果たすのです。

産業革命は現代社会の基本を作り出した

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産業革命は人々の生活の在り方を根本的に変えました。大量生産・大量消費の社会システムがつくられ、資本家が労働者を雇うという資本主義の仕組みが出来上がります。その一方で、富が一部に集中しやすくなり経済格差が大きくなっていきました。産業革命の時代を知ることは現代や今後の社会を予想するうえで重要なことだと考えます。

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