大正平成日本の歴史昭和

「日本共産党」ってどんな政党?歴史や政治スタンスをわかりやすく解説

外交政策について

日本共産党はかつて、ソ連や中国の対外政策に対して、かなり辛口な批判を繰り返していた時期があり、中ソの共産党との関係をほぼ断交していたこともあります。現在の関係は修復されているのですが、外交政策に関して、どのようなスタンスなのでしょうか。

まず日本とアメリカが結んでいる日米安保条約には反対の立場です。対米従属の関係が矛盾しており、「いつまでもアメリカの言いなりではいけない」と事あるごとに述べています。

日米安保条約の枠組みは、今や日米関係だけでなく世界規模にまで広がっていて、「集団的自衛権」の名のもとに、否応なしに世界の紛争に巻き込まれるという懸念があると警鐘を鳴らしているのです。

またアメリカ優位の経済関係が続けば、いずれ日本はアドバンテージをなくして国内産業に打撃を受けるのでは?と懸念していますね。

ただし日米安保条約をなくしたところで、アメリカの軍事力なくして北東アジアの平和はあり得ない部分もあり、平和的な話し合いで安全保障が担保できるかどうかは不透明です。

中国の南シナ海での軍事行動に対しては批判的なスタンスを取っています。「紛争を複雑化し、エスカレートし、平和と安定に影響を与える活動の実施を自制する」という南シナ海行動宣言に反するため、党として中止を求めていますね。

また領有権を争っている尖閣諸島問題に関しても、国際法上、日本の領有は明白であるとして、日本政府が理を尽くして主張し続けることが肝要だとしています。

それは北方領土問題についても同様で、日本の歴史的領土を奪ったスターリンの行動を批判し、領土問題が最終的に解決するまで平和条約は結ぶべきではないと述べているのです。

日本共産党の外交政策については、さらに深堀りすれば様々な主張は垣間見えてきますが、大国に従属しない独立国としての矜持をはっきりすべきという点は明確になっているように思えます。

安全保障政策や自衛隊について

「対米従属反対」「米軍基地反対」が日本共産党の基本スタンスです。話し合いによる北東アジアの平和や安定が理想であるものの、「軒を貸して母屋を取られる」ような状況では元も子もありません。そのために自衛隊という軍事力で国土を防衛しているわけですが、それに対して日本共産党の見解はどうなのでしょう。

日本国憲法第9条2項には「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とあります。第1項は「紛争解決のための戦争はしない。」とありますから、わかりやすく言えば「我が国は軍隊は持ちませんよ」とされているわけですね。

護憲政党の共産党からすれば、自衛隊の存在は明らかに違憲ですし、これを認めるわけにはいかないというスタンスです。とはいえ日米安保条約をなくしてしまえば、国土を守る軍事力は自衛隊以外にありません。そのため日本共産党も渋々ながら自衛隊の存在を容認しているのです。大災害への対応に対しての即応性という点からも「違憲だから絶対認めない!」とはならないのですね。

しかし集団的自衛権を盾にして、自衛隊が海外の紛争地へ出かけていくことに対しては絶対反対の立場です。「自衛隊はあくまで自衛組織であって、海外へ出向いて他地域の戦争に参加するのは許容範囲を超えている」と主張しているのですね。

またそういった重要な事柄が国会で法制化されずに、内閣の閣議決定だけで決められてしまうのは、議会民主主義・立憲主義を冒涜するものだと声を荒げているのです。

天皇制について

戦前戦中の日本共産党は、あくまで「君主制の打倒」をスローガンとして天皇制廃止を訴え続けてきました。戦後しばらく経ってからも「君主制の廃止」をお題目として掲げていましたが、2004年の綱領改定で取り下げていますね。

なぜなら日本国憲法では、天皇の存在はあくまで国民統合のためのシンボルであるとされ、日本の政治に介入することはできないと定義されたからでした。

また国民の多くが皇室に対して尊敬の念を抱き、その存在を支持しているために、いたずらに天皇制の廃止を訴えてもそっぽを向かれることは明らかでしょう。

そういったことから、あくまで憲法での規定を遵守し、「憲法は国民に主権があり、天皇の存在も国民みずからがコントロールできるものだ」と解釈しているのです。わかりやすく言えば「天皇の存在がシンボルであるのは全く問題ない。将来的に天皇の立ち位置をどう決めるかは国民次第。」ということなのですね。

ちなみに「天皇制」という言葉を日本共産党は用いません。なぜなら「天皇制」だと憲法上に明記されていないからです。そのため「天皇の制度」という回りくどい言い方をしていますね。

ただし、ひとたび天皇が政治的な発言をしようものなら、日本共産党は厳しく対応します。

例えば1951年のサンフランシスコ平和条約締結の際に、国会開会式でアメリカ政府に感謝の意を述べたことや、1975年に記者クラブで広島原爆投下に関して「やむを得ないことだったと思う」と述べられたことなど、憲法を無視した迂闊なご発言だったと批判していますね。

あくまで護憲政党らしい「白」か「黒」かで物事を判断する面が強い傾向があるような気がします。

消費税について

日本共産党の消費税に対する考え方は以下の通りです。

※消費税は社会保障のためではなく、大企業や富裕層に対する減税の穴埋めとされてしまっている。

※消費税の存在が貧困や格差をますます拡大させ、暮らしに困窮する人々を圧迫している。

※消費税増税によって経済は低迷し、国民の暮らしや雇用を危険に晒している。

いわば消費税の存在は悪であり、ますます少子高齢化していく日本社会の中で、一般国民の生活に負担を押し付ける害悪だと述べているわけですね。「まずは消費税を5%に下げるべき!」と掲げているわけですが、では消費税を減税もしくはゼロにした場合、社会保障のための財源はどこから持ってくるのでしょう?

日本共産党はこう主張していますね。

 

大企業と富裕層への優遇、不公平税制を見直し、応分の負担を求める。中小企業の法人税負担率は18%だが、大企業は10%しか負担していない。

大企業優遇税制を是正し、法人税の税率を安倍内閣以前の水準に戻す(中小企業は除く)ことで6兆~7兆円の財源が生まれる。

為替取引税、富裕税、炭素税(環境税)を創設し、暮らしのための財源とする。これらで2兆~3兆円規模の財源をつくることが可能。

軍事費や大型開発をはじめ予算を見直し、無駄を削減すれば、3兆円程度の財源を国民の暮らし優先に振り向けることが可能。

さらに国民の所得の改善と健全な経済成長を実現し、さらに税収を数兆~10兆円規模で増やすことが可能。

引用元 「しんぶん赤旗 消費税減税・廃止を求める、新たなたたかいをよびかけます」より

 

現在の消費税を原資とする財源が約20兆円ですから、日本共産党が主張するこれらの施策によって、計算上は辻褄が合うように思えます。

しかしながら、明らかに大企業や富裕層を狙い撃ちしたかのような財源確保を行えば、かえって大企業やお金持ちが海外へ逃げてしまいそうな気もするのですが…

その問いに対して日本共産党はこう答えていますね。「多くの大企業は日本の株式市場に上場しており、海外へ拠点を移すことは不可能。何より国内内需で利潤を賄っている面が大きいため、法人税を上げたところで全く問題はない。」

さらに大企業が貯えている膨大な内部留保(利益によって調達した企業資産)を吐き出させ、労働者や国民、社会へ還元することも主張していますね。そのへんはさすが共産主義らしい考え方なのではないかと思います。

野党連合・政界再編への道

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これまで日本共産党の歴史や政治的スタンスを見てきたわけですが、現在の日本共産党には政権を担って共産党政権を打ち立てる思いはないようですね。あくまで野党としての黒子に徹し、「言うべきところは言い、協調できる部分は協調する。」といった立ち位置を目指しているかのよう。また政治主張がとかく極論過ぎる部分が多いために、他党との選挙協力や連合などが難しいとされてきました。しかし元々強固な岩盤支持層も持っていますし、政策のうえで妥協できる融通性があれば、野党連合の有力な勢力になるのではないでしょうか。

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明石則実