平安時代日本の歴史

5分でわかる今昔物語集総まとめ!概要や読み方・あらすじ、「羅生門」をはじめ有名で面白い話をわかりやすく紹介

1-4. 明治の文豪も夢中!今昔物語集に影響を受けた小説とは?

今昔物語集は、その後の日本の文学に大きな影響を与えました。江戸時代に入ってからは、写本はほとんど作られなかったようですが、明治時代に入ってから再度注目されるように。再評価されるようになったきっかけは芥川龍之介だったと考えられています。

『鼻』や『羅生門』『好色』『芋粥』など、芥川龍之介の代表作の中には、今昔物語集の中のお話を題材にしたものがあり、その後、今昔物語集の文学的価値も再度注目されるようになったのです。

イソップ寓話やグリム童話のように「人生の教訓」が織り込まれた物語が数多くおさめられている今昔物語集。古い古い物語集ですが、現代人が読んでも面白く興味深いものがたくさんあります。現在でも、大手出版社から現代語訳付きの文庫本が出版されており、なかなか読みごたえがあるのでおススメです。

2. 意外と知ってる?今昔物語集に収録されている有名なお話

image by PIXTA / 50016973

前述のように、芥川龍之介の著書を通じて今昔物語集の存在を知った、という方も少なくないかもしれません。また、他にも、どこかで聞いたことがあるような昔語りのお話が、今昔物語集にはたくさん収められています。読んでみると結構おもしろい。次に、1000を超えるお話が収録されている今昔物語集の中から、有名なものをピックアップしてご紹介いたします。

2-1. 「池尾の禅珍内供の鼻の物語」(巻28の20)

京都の池尾というところに住んでいた、禅珍という僧侶が主人公。とてもまじめで高徳なお坊さんでしたが、「鼻が異常に長い」という不思議な顔立ちをしていました。15㎝以上もあるというその鼻、腫れて紫に変色して痒い痒い。いつもは弟子のひとりに鼻を持ち上げさせて食事をしていました。

しかしあるとき、その弟子が病気で休んでしまいます。鼻が邪魔で食事もままならず困っていると、どこからともなく童が現れて、板を使って鼻を持ち上げてくれたので、無事食事をとることができたのですが……。なんと童が突然、大きなくしゃみをしてしまいます。禅珍の鼻を持ち上げていた板がずれ、禅珍の鼻がお粥の中にドブン。お粥があちこち飛び散ってしまったのです。禅珍は超激怒。「愚か者!これがもっと位の高い人の鼻を持ち上げているときだったらどうするのだ!出ていけ!」と怒鳴ります。

童は追い立てられて物陰に隠れ、一言つぶやきました。「こんな大きな鼻を持つ人が他にいるとお思いですか?おかしなことを言うお坊様だ」これを聞いた弟子たちはみんな大笑いしたのだそうです。

2-2. 「羅城門の上層に登りて死人を見る盗人の物語」(巻29の18)

とある男が摂津国(大坂)のあたりから、京都へ盗みを働くためにやってきます。男は人通りが少なくなる日暮れを待つため、羅城門(らじょうもん・都の南に位置する正門)の二階によじ登り、身を隠すことにしました。

真っ暗なはずの門の二階に、ぼんやりと灯りがともっています。不思議に思った男が中を覗いてみると、床に若い女の死体が。そしてその死体のそばに、白髪の老婆が座り、女の死体から髪の毛を抜き取っています。驚いた男。一瞬、鬼か?亡霊か?と思いましたが、それを確かめるために老婆の前に飛び出し、何をしているのかと詰め寄ります。

老婆は慌てふためいて命乞い。そして、死んだ若い女は自分の主人であったこと、亡くなってしまったけれど弔うこともできず、こうして羅城門の上に置きに来たこと、主人の髪が長かったので、抜いてかつらにしようと考えたと告白します。刹那、男は死体の着物、老婆の着物、そして死体から抜き取った髪を強奪。逃げていったのだそうです。

2-3. 「平定文本院の侍従に仮借する物語」(巻30の1)

その昔、平中と呼ばれるイケメンモテ男がおりました。

その平中、侍従の君という若くて美しい女房(身分の高い人に仕えた女性使用人)に恋をしますが実らず、何とかその女性の欠点を見つけて諦めようと考えます。どうしたらあの女性を忘れることができるだろう。そこで平中が考えた奇策とは……。その女性の便器を見ることでした。

あんな素敵な女性でも、便器にしたものはキタナイはず。それを見れば思いを断ち切ることができるはずだ。そう考えた平中はその女性の便器を盗み、中を覗きます。すると……中から丁子(チョウジ・香りのよい植物)の良い香りが。便器の中身はフンニョウではなく、丁子の煮汁と、香りのする植物などを練り合わせて作った固形物だったのです。

便器の中のものを人に見られるかもしれないと考えた気遣い。あの女性は、こんなことまで気が付く素晴らしい女性なのだ。便器の中にさえ、あの女性の欠点は見つからない。平中の思いは募る一方。そうこうしているうちに平中は悩み過ぎて病気になってしまい、命を落としてしまったのだそうです。

読むとハマる!古今東西様々なお話がたくさん詰まった「今昔物語集」

image by PIXTA / 48911001

仏教の説法から始まり、恋愛話やヨタ話、妖怪や魔物が登場する奇妙奇天烈な物語まで、様々なお話がたくさん詰まった「今昔物語集」。現代風に読みやすく翻訳した本もたくさん出ているので、古典だからといって難しく考えず、気軽に読むことができます。考えさせられるものから「何が言いたいんだ」とツッコミ入れたくなるものまで色々楽しめておすすめ。だいたいあらすじがつかめたら、原文に近いものを読んでみるのも一興です。漢字カナ交じりの文章は味わい深く、平安時代にタイムスリップしたような感覚も味わえます。

1 2
Share: