イギリスヨーロッパの歴史

ナポレオンからイギリスを守った海軍提督「ネルソン」を元予備校講師がわかりやすく解説

トラファルガー海戦の勝利とネルソンの死

敵艦隊の中央突破を図るべく旗艦ヴィクトリーを進めるネルソン。ヴィクトリーは常に最前線にあり敵の砲火が最も集中しています。それでもネルソンは安全な場所に避難することはせず、甲板で指揮をとり続けました。

ネルソンが意図したようにイギリス艦隊は敵の中央突破が成功。戦列を乱したフランス・スペイン連合艦隊は後退し始めました。

その時、フランス艦隊の狙撃手が放った銃弾がネルソンを打ち抜きます。被弾したネルソンは甲板に倒れました。

駆け寄ったヴィクトリーの艦長ハーディに、ネルソンは「私を祝福してほしい。私は与えられた義務を果たした」と告げて亡くなります。

トラファルガーの海戦はイギリスの圧勝でした。フランス・スペイン連合艦隊は22隻を失ったのに対し、ネルソン艦隊は1隻の損失も出していません。兵員の死傷者数でも連合艦隊はネルソン艦隊のおよそ十倍。世界海戦史上でも例がないほどのネルソンの完勝といってよいでしょう。

義務を果たした男の帰還

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ネルソンの遺体は腐敗を防ぐための防腐処理をほどこされてイギリスに帰国します。国王や貴族たちは勇敢で偉大な提督の死を惜しみました。国王はネルソンの国葬とセント=ポール寺院への埋葬を決定します。ネルソンが用いた「duty」という用語は現在でもイギリスで社会的地位が高い人たちにとって守るべき言葉として尊重されました。ネルソンの行為は今日のノブレス・オブリージュとよばれる高位者こそリスクを負うべきとの観念を定着させたのかもしれませんね。

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