小説・童話あらすじ

19世紀ドイツの学者兄弟「グリム兄弟」の生涯と童話の世界を解説

仲間がいれば何でもできる「ブレーメンの音楽隊」

あるところに、大変働き者のロバがいました。毎日毎日穀物の袋を運ぶ仕事をしていましたが、歳には勝てず、だんだん体が弱って働けなくなってきたため、飼い主から粗雑な扱いを受けるようになります。

ロバは新しい生活を求めて、大都会・ブレーメンへ行って音楽隊に入ろうと心に決め、脱走。道中、自分と同じ境遇の犬や猫、ニワトリと出会い、四匹でブレーメンを目指すことになったのです。

四匹は森の中で、灯りのついた小屋を見つけます。中に何やら怪しげな男たちの気配。なんといかにも悪そうな泥棒たちがご馳走を食べながら、盗んだ金貨を数えていたのです。

ロバたちは泥棒を脅かしてご馳走を奪い取ろうと画策。四匹にとっては、こんな大冒険は初めての経験です。

窓の外にロバが立ち、その上に犬、猫、一番上にニワトリが乗り、四匹は一斉に大きな声で鳴き始めます。泥棒たちはびっくり仰天。窓の外に巨大な化け物の影が!恐ろしい声で鳴く化け物の姿に恐れおののいた泥棒たちは、取るものもとりあえず小屋から飛び出して逃げてしまいました。

ご馳走にありつくことができた四匹。そこへ「よく考えたらお化けなんておかしい」と怪しんだ泥棒たちが小屋に戻ってきます。いち早く気付いたロバたちは、暗がりの中、泥棒たちを強襲。「やっぱり化け物がいる!この小屋には化け物がいるぞ!」泥棒たちは再び逃走。二度と戻ってくることはありませんでした。

大泥棒を追い払うという大冒険をやってのけた四匹。年老いていたって、卵を産むことができなくたって、仲間がいれば何でもできるさ!ロバと犬と猫とニワトリは、この小屋で音楽を奏でながら仲良く暮らしたのだそうです。

この後、四匹がブレーメンを目指したかどうか定かではありませんが、おそらくブレーメンには行っていないものと思われます。大都会でなくても、仲間たちと協力し合えば新しい人生を切り開くことができる。とても大切なことを教えてくれる物語なのです。

知恵と勇気で乗り切れ「ヘンゼルとグレーテル」

この物語が誕生したとされる14世紀前半のヨーロッパでは、全域で大飢饉が起き、暗く物悲しい空気が漂っていたと考えられています。飢えに苦しむ大人たちの中で、互いに助け合いながらたくましく生きる兄妹の物語です。

とある森に、貧しい木こりの家族がいました。両親と、ヘンゼルとグレーテルの兄妹。食べるものに困った母親は「子供たちを森に捨ててくるように」と父親に命じます。ひどい母親です。

森に置き去りにされた兄妹。ヘンゼルの機転で一度は無事に家に戻ってきますが、二度目は、家に戻るために行く道々落としていったパンくずを鳥に食べられてしまって、二人は帰路を絶たれてしまうのです。

ヘンゼルとグレーテルは森の中で、お菓子でできた家を発見。おなかがすいていた二人がお菓子の家を食べていると、中から老婆が現れ、二人に食べ物やベッドを提供してくれます。

オイシイ話には裏がある。この老婆は魔女で、ヘンゼルに食事を与えて太らせてから食べようと考えていたのです。

数日後、魔女はグレーテルに「お前の兄さんを煮るから、かまどの火の温度を見てきな」と言われます。やり方がわからないと言うグレーテル。魔女は「こうやるんだよ!」とかまどの中に頭を突っ込んで手本を見せます。

刹那、グレーテルはありったけの力を振り絞り、魔女をかまどの中に突き飛ばすことに成功。魔女は焼け死んでしまいます。

グレーテルはヘンゼルを助け出し、魔女の家にあった財宝を持って家へ。あのひどい母親は病気で亡くなっており、父親は子供たちを捨てたこと悔やんで泣いていました。父親と兄妹は魔女の財宝で大金持ちになり、いつまでも幸せに暮らしたのです。

少々残酷な物語も魅力のひとつ?数多くの童話を世に送り続けたグリム兄弟

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子供のころは何の疑問も持たず読んでいたグリム童話。大人になってから読み返してみると、グロテスクな場面も数多く登場し、残酷なエンディングのものが多いことに気づかされました。現代社会では残酷に思えるストーリーでも、古い時代の伝承や昔話としてはごくごく当たり前の内容だったのかもしれません。そんな物語を数多く世に広めたグリム兄弟の功績は大きいと、改めて感じさせられました。

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