小説・童話あらすじ

ガストン・ルルーの放った傑作「オペラ座の怪人」その世界をわかりやすく解説

ガストン・ルルーの代表作「オペラ座の怪人」。アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカルや、劇団四季を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。1909年に発表されたこの物語は、ノンフィクション小説の形式をとっためくるめく伝奇小説。可憐な歌姫、彼女に恋する貴公子、謎のペルシャ人、暗躍する「オペラ座の怪人(ファントム)」……要素を並べるだけでワクワクしてきます!「オペラ座の怪人」の世界をご一緒に。

【あらすじ】「オペラ座の怪人」原作のあらすじ

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「オペラ座の怪人」の舞台は1905年パリ。フランスの代表的歌劇場・オペラ座の建物に「オペラ座の怪人(ファントム)」が実在している――ノンフィクションテイストで描かれるこの作品は、オペラ座の怪人の正体とクリスティーヌ、ラウールの三角関係を探る物語。ちなみにミュージカル版の「オペラ座の怪人」は原作のいいとこ取りをした上で微妙に流れや内容が異なります。ここでは原作のあらすじをご紹介しましょう。

「オペラ座の怪人より」――新支配人たちのもとへの手紙と奇怪な事件

オペラ座の怪人は実在した。ガストン・ルルー自身がノンフィクション形式で書いたという様式のこの小説。フランスのオペラ座に実在したと主張される「オペラ座の怪人(ファントム)」の正体と、歌姫クリスティーヌ・ダーエおよびラウール・ド・シャニー子爵の恋物語で構成されています。

オペラ座新支配人の2人は着任早々「オペラ座の怪人」は実在すると言われました。その証拠にファントムは5番ボックス席と月給2万フランを請求してくる、と。わけわからん奴にと月給2万フランの大金なんてばっからしい!そんな中、舞台であざやかな歌唱を果たした美しく若き歌姫がいます。名前はクリスティーヌ・ダーエ。それまでイマイチだったのに一気に上達した彼女が抱いていた秘密とは……彼女と幼馴染だったラウール・ド・シャニー子爵は、これをきっかけにクリスティーヌと再会。クリスティーヌはしかし他人のふり、その場の人を部屋から締め出してしまいました。しかし盗み聞きしていたラウールは奇妙な声を聞きます。クリスティーヌに話しかける謎の男の声を……。

クリスティーヌは、嫉妬したライバルの歌姫カルロッタの勢力によって仕事を干されてしまいます。ファントムは手紙で支配人らにクリスティーヌを舞台に上げるよう要求。それを無視した2人。カルロッタは舞台に上がり意気揚々と歌うのですが、そこに、歌手として致命的な不可解なアクシデントが起こります。そしてシャンデリア落下事件が発生するのです……。

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歌姫クリスティーヌと貴公子ラウール、ファントムの秘密とは……

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クリスティーヌは「音楽の天使」のレッスンによって鍛えられたといいます。その正体は他の男であると、ラウールは嫉妬に狂いました。そんな彼にクリスティーヌは、婚約者になろうと言います。自分はオペラ座の怪人によって見張られているし、ある約束をしているから逃げられないけれど、と。ラウールにクリスティーヌが語ったのは不可思議な体験でした……。

彼女はファントムによってさらわれ、数日間を共に過ごしたといいます。オペラ座の地下には湖が広がっており、そこにファントムの住まいはあるのでした。クリスティーヌはこのファントムこそが、自分にレッスンをつけてくれた『音楽の天使』だと確信します。しかしファントムのかぶった仮面の下は、世にも醜いおぞましい顔。その後ファントムはクリスティーヌをある条件付きで開放したのです。

ラウールはクリスティーヌと駆け落ちの計画を立てます。なんとしてもクリスティーヌをファントムから引き離そうとして。しかし駆け落ち当日の歌劇の舞台で、クリスティーヌは衆人環視の中いきなり姿を消すのです。

ペルシャ人とラウールのクリスティーヌ奪還作戦

舞台上で忽然とクリスティーヌは消えます。ラウールのもとに現れたのは、謎のペルシャ人・ダロガ。彼はファントムの過去と正体を知るものでした。クリスティーヌを愛する2人の男――ファントムとラウールの対決。クライマックスはペルシャ人ダロガの手記で構成されます。

クリスティーヌがさらわれた先は、あのオペラ座の地下のファントムの住まい。パニック状態のラウールを連れてペルシャ人はファントムのもとへたどり着くべく死力を尽くすのです。2人は世にも奇妙な冒険を繰り広げることとなります。オペラ座の建物に隠された歴史的秘密とは、一体。

そしてファントムはなぜこんなことを?彼はあるおぞましい過去を持っていました。才能ある作曲家であり芸術家、奇術師であるファントム。その仮面の下は……彼のクリスティーヌへの想いは暴走し、そしてどこへたどり着くのか?そして、クリスティーヌが言った、奇跡を呼んだ言葉とは。

ミュージカル「オペラ座の怪人」

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「オペラ座の怪人」が新しい形で生命を吹き込まれたのは、1986年。ミュージカル史上最高のヒット作となったこの作品を作曲したのは、生ける伝説的作曲家・アンドリュー・ロイド・ウェバーです。後に日本でも劇団四季によって日本語版が上演されました。筆者が初めて「オペラ座の怪人」に出会ったのは2004年公開の、このアンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカルの映画版。生きているうちに絶対観ておいてください!猛プッシュしたい傑作ミュージカルをご紹介。

ファントムと天才音楽家の出逢い

「オペラ座の怪人」はそれまでにも何度も映画化されてきました。1925年の映画版は日本でもブレイクしたほど。音楽とロマンスにあふれたこの題材と出会ったのは、大作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーでした。彼は「キャッツ」「エビータ」などミュージカルで大ヒットを飛ばすした人物。ちなみにイギリス人で、なんと功績を評価された結果王室から男爵の爵位を授与されるほど。

筆者も後述する映画版でサウンドトラックCDまで買って聞きまくり、そして衝撃を受けました。一言で感想を凝縮してくださいと言われると、こんな言葉が浮かびます、「オペラ座のファントムも本望だ」と。ちなみにペルシャ人はミュージカル版ではある人物に役割が統一されています。原作とミュージカルの違いを比べるのも、この作品を味わう醍醐味です。

彼は伝奇小説的な要素をシナリオからほぼ排除し、クリスティーヌとファントム、ラウールの切実な愛の対決に焦点を合わせました。そして「絵ヅラ」がすさまじく良いあのシーンをクライマックスに配置しています。日本では劇団四季が日本語版を上演。20ヶ国以上で公演された「オペラ座の怪人」の動員観客数は、1986年から2019年まででなんと合計1億4000万人以上!すごいですね。

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2004年公開の映画「オペラ座の怪人」もすごく良い!

2004年にアンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカル作品が映画化・公開されました。歌はキャスト本人が猛特訓のすえに歌唱しています。(クリスティーヌのライバル役カルロッタのみ吹き替え。彼女の歌う「プリマドンナ」は曲としてものすごく難しい!)登場するのは一流のパフォーマーばかり!映像作品としても眼福です。

クリスティーヌ演じるエミー・ロッサムの歌も魅力的。序盤の「Think of me」の可憐さから、「Point of no return」で妖艶ともとれる歌姫に成長する様も見どころ。スワロフスキークリスタルを連ねて作ったシャンデリア(制作費1億2000万円!)の豪奢さもさることながら、そのシャンデリアがクライマックスで衝撃の役割を果たすシーンは本物の(実際に落としたのはガラス製のものですが)シャンデリアを用いた、渾身の「一発撮り」。圧巻です。

総合芸術監督として自ら指揮をとったアンドリュー・ロイド・ウェバーの意志で、ファントムの歌唱部分はロック調でアレンジメントがされています。これは賛否両論でしたが(「オペラ座の怪人なんだからオペラでクラシックに歌えばいいのに!」とはたしかに筆者も思いました)ジェラルド・バトラーの力強い歌は、ファントムの熱すぎる情熱を表して有り余る素晴らしい歌唱です。細部まで作り込まれたセットや衣装も美しい!「オペラ座の怪人」入門としてこの映画はおすすめ!

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