ドイツナチスドイツヨーロッパの歴史

アドルフ・ヒトラーを題材とした映画3作品を見比べ!「最悪の独裁者」像とは…?

「ヒトラー 最期の12日間」(2004年)

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まず最初にお届けする作品は、2004年に公開された「ヒトラー 最期の12日間」。制作はなんとドイツ!ドイツ本国においてアドルフ・ヒトラーを人間らしく描くというのはタブーとされていましたが、戦後70年間の呪縛を破った、ある種革新的な作品です。ヒトラーの秘書をしていたトラウドゥル・ユンゲの手記をベースに、ベルリン陥落とヒトラー自決、ヒトラーの後を追って死を選ぶ側近たちの姿を描きました。

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【あらすじ】『ヒトラー 最期の12日間』

1945年4月、ベルリン市街戦。物語はヒトラーの秘書として彼の最期を見届けた、トラウドゥル・ユンゲの視点で描かれます。消耗したドイツ第三帝国の軍隊。総統地下壕でアドルフ・ヒトラーは、側近や秘書、愛人のエヴァ・ブラウンや愛犬たちとともに破滅の足音を聞いていました。あらゆる手を打ち尽くして、ソビエト連邦への降伏しかないという現実を突きつけられるヒトラー。

ドイツ第三帝国の崩壊を確信した総統地下壕では、乱脈なパーティーまがいの光景が繰り広げられ、着々とヒトラーは自分の最期の準備を進めます。ヒトラーは愛人のエヴァ・ブラウンと正式に結婚。そしてついに自殺を遂げるのです。ヒトラー夫婦の遺体は砲弾降り注ぐ中でガソリンにより焼却されます。

支柱を失った総統地下壕はもはやガタガタでした。側近が自らの頭を撃ち抜く銃声が響き渡る総統地下壕。最後までヒトラーに忠実だった宣伝相のゲッペルスは、妻や子供ともども一家である結末を選びます。一方で市街地でも残酷な戦闘やリンチが繰り広げられ……トラウドゥルたち生き残った者は果たしてどうなってしまうのでしょうか?アドルフ・ヒトラーの死の前後12日間を描く名作。

戦争の悲惨さと「人間ヒトラー」

率直に言いましょう。この作品のヒトラー、すごく人間的でカワイイです。独裁者なんだからパワハラ上司のブラック組織かと思いきや、女性秘書にやさしく、犬を愛し部下を大切にし、おちゃめな面が満載。「帰ってきたヒトラー」でもそうですが、人柄や内面を知るとみんなヒトラーが大好きになってしまうのです。ちなみに登場人物が男女問わず煙草スパスパなのも「時代」を感じますね。

しかしこの作品は、死屍累々です。ベルリン陥落の市街戦シーンは圧倒される、の一言。独ソ不可侵条約を破って進軍してきたソ連兵の姿や「共産主義のスパイ」としてリンチされて殺される市民。そしてヒトラーの後を追って自決する側近たちの銃声。暴力シーンを観るのがつらい人は要注意。しかし、1945年当時のベルリンと似ているという理由でロケ地に選ばれたサンクト・ペテルブルグの街並みの美しさや、冷たい色彩の感じなど、映像美としても抜群です。

ヒトラー=超極悪人ということを、鑑賞中の2時間だけ忘れてしまう、この映画。人間ヒトラーの引き起こした悲劇。最後に冷水を浴びせられる一言が待っています。

超シリアスシーンで「おっぱいぷるんぷるん」!?

『ヒトラー 最期の12日間』というと、一部のネット住民はこう言うでしょう「ああ……『おっぱいぷるんぷるん!』の動画のアレか」と。どちらかというとこの「ネタ」で、映画を知っている人も多いかもしれませんね。さてこのシリアス一色の映画に何があったのでしょう。

絶望的な戦況を聞かされたヒトラーが、一部の側近のみを残して人払いをした上で、地下室で怒りを爆発させるシーンがあります。猛烈な絶望に襲われた本作品随一の名シーンですが、ここで日本人の耳にはこんな空耳が聞こえてしまうのです。「おっぱいぷるんぷるん!」と。

この空耳を誰が聞きつけたかは知りません。しかし検索をかけると、各種動画サイトでこのパロディ動画がたんまり出てきます。筆者は先に「おっぱいぷるんぷるん」でこの作品を知っていたため、超シリアス名シーンで爆笑し続けていました。ダメな視聴者ですね。ちなみにこの名シーン「帰ってきたヒトラー」でもパロっていて日本人の腹筋を破壊しにきています。

『シンドラーのリスト』(1993年)

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ヒトラーは出てきませんが、続いて世界の名画ベスト10にも選ばれる名作『シンドラーのリスト』を紹介しましょう。1993年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の代表作です。これはすべての人に見てほしい名作映画。この記事で紹介する他の2作品で描かれる「人間ヒトラー」はあまりにも魅力的で、だからその罪がかすんでしまうのです。ヒトラーの成した最悪の所業を描く、痛切な物語。

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【あらすじ】『シンドラーのリスト』

ドイツはポーランドを陥落させ、自らの勢力圏に置きました。そんなポーランドの古い都市・クラクフにやってきたナチスの党員がいます。オスカー・シンドラー。彼は一攫千金をめざしてこの地へやってきた実業家。ユダヤ人を労働力にしてひと稼ぎすることを目的として、琺瑯(ホーロー)工場を建設します。

シンドラーは安価な労働力としてユダヤ人を使うことに。自分の片腕として、ユダヤ人の経理イザック・シュターンを雇い入れ、順調に業績は上がります。そんな中で国中のユダヤ人をユダヤ人地区に追いやる政策が実現に移され、それは民族浄化のホロコースト虐殺と、生きて帰ることはできぬ強制収容所・アウシュヴィッツにつながっていくのです。

したたかにシンドラーは自分の工場を守ろうとします。シンドラーの工場にいるユダヤ人たちは、事実上強制収容所送りを免れることに。シンドラーはある「リスト」を作成するのですが……。1000人ものユダヤ人のリストの正体とは一体。

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