日本の歴史

沖縄のお盆ってどんなもの?~独特の宗教文化と先祖崇拝~

♯1先祖をあの世からお迎えする日【ウンケー】

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旧暦の7/13は、自分たちの先祖をあの世からお迎えする大事な日にあたります。朝から仏壇をきれいに乾拭きし、お供え物を供えるのですが、ウチャトウというお茶や供え花、お酒などは絶対に欠かせません。

また仏壇の飾りとしてサトウキビも重要な役割を果たしますね。長いサトウキビを飾るのは、あの世から来る先祖が杖代わりに使うため。ちなみに短いサトウキビも飾りますが、こちらはあの世へのお土産用だそうです。

いずれにしても旧盆の時期には、近くのスーパーや量販店で簡単に手に入るので、便利になったものですね。それから果物を供えることも欠かせません。パイナップルやスイカ、バナナなど沖縄らしい果物などは大定番ですね。ただし、果物はお供え物だけに熟していないものが多いため、そのままでは食べられないことが多いです。

ウンケーの際に先祖にお出しする食べ物として、ウンケージューシー(炊き込みご飯)や酢の物、白団子などが用意されます。元々は精進料理をわざわざ作る家もあったそうですが、現在ではより簡素に手早くできるウンケージューシーがほとんどだとか。

そしていよいよ門前で先祖を出迎えます。家長を中心にして沖縄独特の線香【ヒラウコー】に火をつけ、「ご先祖様、どうぞお越しください」と唱えるのが一般的。

家の中に入って頂いたら、今度は家族みんなでヒラウコーを香炉に供え、お盆を始める言葉をお掛けします。あとは先祖と一緒に楽しくご飯を食べるだけですね。

♯2お中元を持って親族宅を回る日【ナカビ】

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文字通り、お盆の真ん中の日という意味になりますが、実は意外に忙しい日にあたるといってもいいでしょう。仏壇がある親族の家へお中元を届けに行くというもので、本土でも地方や田舎へ行けば、お彼岸の時期にはそういったしきたりがありますよね。

もちろんナカビの日でもお供えする食べ物はきちんと決まっていて、汁物や酢の物、団子やそうめんなども準備されます。沖縄でもおなじみの豚の煮物などもありますね。

いくつも親戚を回るので、お中元は高価なものでなくてもよく、たいていは気心が知れた仲なので雑談や世間話をして帰るのが一般的です。お菓子などもたくさんもらえる日なので、子供たちにとってうれしい日でもありますよね。

♯3先祖をあの世へお見送りする日【ウークイ】

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そして7/15は沖縄のお盆の最終日にあたります。最もにぎやかで盛大、かつ大切な日であるウークイと呼ばれるのがこの日ですね。いらっしゃった先祖をあの世へお見送りするのです。

お見送りの行事は日が暮れてから行われるのですが、まるでお節料理の重箱のようなウサンミという料理が供えられますね。おかずやお餅の入った重箱が重ねられ、他にも汁物やくわっちー(ごちそう)なども食膳に並べられることに。

家族全員が仏壇の前に集まったら、家長がウチカビ(打ち紙とも)という黄色い紙を燃やし始めます。これはあの世へ戻る先祖がお金に困らないように、これを燃やすことでお金代わりに持たせてあげるということ。そして家族も順にウチカビを燃やしていきますね。

最後は家族全員で手を合わせて儀式は終了するのです。もちろんウサンミの中身も葉でくるんで、ご先祖様へのお土産として玄関先へ持って行くわけですね。

沖縄のお盆に関連した風俗や習慣

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沖縄では、お盆に関連して様々な風俗や習慣が誕生しています。古い伝統に根ざしたものや新しく文化となったもの。形は違えど、いかにも沖縄らしいスタイルを紹介していきましょう。

沖縄の仏教文化に根差したエイサー

三線(さんしん)や太鼓の音色に乗せて躍動感をもって踊られるエイサー。今や沖縄を代表する伝統芸能ともいえますよね。夏の風物詩ともなったエイサーですが、元々はお盆の際に、亡くなった方や先祖たちをお迎えし、またお見送りする意味が込められています。いわば本土の盆踊りのようなものなのです。

でも元来は沖縄特有のものではなく、本土から伝わってきた念仏踊りだそうで、江戸時代初期に現在の福島県から中国へ渡ろうとした袋中上人浄土宗を布教した時に広めたものだそう。

ただ念仏を唱えるだけで極楽へ行けるというわかりやすい教義が、琉球の人々に受け入れられ、信者を増やすきっかけとなりました。薩摩藩島津氏禁教政策によって仏教じたいは衰退していきますが、この念仏踊りだけは一般庶民の間で受け継がれ、形を変えながらエイサーへと変化していったのですね。

白熱する沖縄のお盆商戦事情とは?

本土のお盆とは違い、沖縄では一年を通して最も大切な年間行事の一つですので非常に盛り上がります。それこそクリスマスや歳末商戦並みに小売店は忙しさのピークを迎えますので、それはそれは大変だそう。

毎年のように沖縄タイムスや琉球新報には「お盆商戦」の記事が踊りますし、お中元の時期とも重なりますので、果物やサトウキビ、供え花、ハムや缶詰などが飛ぶように売れます。

また最近では「お盆バーレル」「旧盆オードブルセット」などの関連商品がファーストフード店や宅配店からも発売になりますから、まさに中食産業にとっては掻き入れ時といっても良いでしょう。本土のお盆の場合はそれほど盛り上がったりはしないので、そういったところにも沖縄独自の文化があるのかも知れません。

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明石則実