小説・童話あらすじ

なぜ鯉のぼりを飾るの?童謡「こいのぼり」の歌詞の意味は?鯉のぼりの謎をわかりやすく解説!

童謡「こいのぼり」には、よく知られている1番の歌詞の他にも2番、3番の歌詞が存在しているのです。あまり知られていない歌詞は以下の通り。

 

※2番の歌詞

みどりのかぜに さそわれて
ひらひらはためく ふきながし
くるくるまわる かざぐるま
おもしろそうに およいでる

※3番の歌詞

ごがつのかぜに こいのぼり
めだまをぴかぴか ひからせて
おびれを くるくるおどらせて
あかるいそらを およいでる

3-2.なぜ2番、3番の歌詞はあまり知られていない?

なぜあまり2番、3番の歌詞がほとんど知られていないのでしょうか?実は2番、3番の歌詞は後付けで作詞者も違うためなのです。

作詞者の近藤宮子が「こいのぼり」を発表したのが昭和6年のこと。その当時はまだ1番の歌詞しかありませんでした。ところが戦後、児童教育の重要性が増すに従って「こいのぼり」にも続詩を付け加えようということで、児童文学作家の小林純一が作詞し、昭和44年に「新訂標準おんがく」の中に掲載されたのです。

小林純一は日本童謡協会の理事長も務められた偉い方でしたが、ついに2番、3番の歌詞がメジャーになることはありませんでした。

ちなみに、後付け歌詞は他のバージョンも数多く存在しており、下記のような歌詞も確認されますね。

 

やねよりたかい こいのぼり
おおきなおくちに かぜのんで
ごがつのそらに げんきよく
あおいおそらをおよいでる

 

やねよりたかい こいのぼり
おおきいひごいは おかあさん
ちいさいまごいは こどもたち 
おもしろそうにおよいでる

 

このバージョンでは「お母さん」が登場しています。「ひごい」がお母さんになり、「まごい」が子供たちになっていることに注目ですね。

4.童謡「こいのぼり」の成り立ちとは?

image by PIXTA / 49959552

近藤宮子が発表した最もメジャーな「こいのぼり」。この童謡の成り立ちから、その後の著作権騒動まで。童謡として似つかわしくない経緯もありました。そして「こいのぼり」よりもずっと前から、鯉のぼりに関する童謡が存在していたことがわかります。ちょっと歴史を紐解いてみましょう。

4-1.作詞の才能が豊かだった近藤宮子さん

童謡「こいのぼり」の作詞者である近藤宮子は広島県生まれ。父母や夫の影響から音楽とは縁が深い生活を送っていたようです。

ある時、幼稚園唱歌研究部に関わっていた父から唱歌の作詞を頼まれた宮子は、「こいのぼり」をはじめ「チューリップ」など10曲もの唱歌を作り提出しました。

あまりの出来の良さに日本教育音楽協会はその全てを採用扱いにしたそうで、彼女の才能の豊かさがうかがえますよね。

 

4-2.激動の時代の中で失われた作詞者の名前

ところが当時の世相は治安維持法が制定され、満州事変が起こったりと不穏な状況が増しつつあった時期でした。多くの文化人たちが左翼的思想だと糾弾され、鬱屈した暮らしを余儀なくされていました。

そんな中、宮子の弟が共産党に入党していたことから左翼的活動を扶助していると目を付けられ、彼女が作った童謡や唱歌はすべて無名著作物の扱いを受けてしまったのです。

しかし戦後になって、日本音楽著作権協会が無名著作物に関して名乗りを上げるよう呼びかけていたものの、宮子は「別に自分が名乗り出なくても、これからも歌い継がれていくのであればそれで構わない」と、あえて名乗り出なかったそうですね。

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明石則実