豆知識・雑学

煎餅とおかきの違いは?ポン菓子って何?奥深い「米菓子」雑学の世界

煎餅やおかきのような、お米から作ったお菓子のことを「「米菓(べいか)」「米菓子(こめがし)」などと呼びます。ケーキやパフェのような華やかさはありませんが、日本人の心をしっかりつかんで離さない、古くから親しまれてきたお菓子、米菓子。どんな種類があって、いつ頃から食べられていたのでしょうか。この記事では、米菓子の由来や歴史など、いろいろな雑学を集めてみました。

米菓子と言えばこれ!絶対王者「煎餅」の雑学

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丸くて、硬くて、パリッとしていて香ばしいお煎餅。お茶菓子の定番として、日本全国に数多くのお煎餅屋さんがあります。ところでせんべいってどうして「煎餅」という字が使われているのでしょう?いつ頃から食べられているものなのか、その歴史や由来は意外と知られていないのです。それに、中には「南部煎餅」や「瓦せんべい」など、お米以外の穀物を使った煎餅もたくさんありますね。お煎餅雑学の世界、ちょっと覗いてみましょう。

実は謎が多い?煎餅はいつ頃からあるの?

「煎餅」とかいて「せんべい」。日本人にとって最も身近なお菓子ともいえる煎餅ですが、身近過ぎるせい、かその歴史は意外と知られていません。

煎餅とは、うるち米(普段私たちが食べている普通のお米)をつぶして平たくして乾燥させてから焼いた食べ物です。

実は、煎餅の起源や由来は、はっきりとはわかっていません。ただ「米を平たくして焼いたもの」という定義で考えるなら、同様のものが登呂遺跡など弥生時代の遺跡から複数発見されています。これが煎餅の原点であるなら、煎餅には2000年以上の歴史があると考えてよいはずです。

さらに遡って縄文時代の遺跡からは、芋類などを平たくして焼いたものが出土。日本人は何千年も前から、食べ物を加工調理しておやつタイムを楽しんでいたのではないか、と想像が膨らみます。

「煎餅」って名前はいつ頃から?

「煎餅」という名前は、中国から伝わってきたと言われています。

「せんべい」という食べ物は2200年ほど昔、中国の前漢の時代には既に食べられていました。その当時はうるち米ではなく、小麦粉を練って油で煎った(中国では熱い鉄板の上などで焼くことを「煎」という)ものだったそうです。「煎餅」という名称はこれに由来すると考えられています。もち米は使われていませんが「餅」という字を使うのが一般的です。

現在でも中国には、小麦粉を練って薄くのばし香ばしく焼き上げた「煎餅」という料理があります。日本の煎餅のようなものではなく、どちらかというとクレープや薄焼きピザに近いです。

これを空海が中国に渡った時に製法を習って日本に伝えたと言われています。しかし日本では日本人の好みに合わせて、油で煎るのではなく、焼いて塩や醤油で味付けしたものが作られるようになりました。

どうして煎餅は丸いの?

四角や棒状の煎餅もありますが、一般的には丸い形をしたものが多い煎餅。形には理由があるのでしょうか。

埼玉県の草加市に「草加せんべい」という煎餅があります。丸くて分厚くてしっかり固い、王道の煎餅。草加せんべいをはじめに作ったのは「おせん」というお婆さんだと言われています。観光用のチラシなどにも載っているので、ご存知の方も多いでしょう。

江戸時代に入って間もないころ、日光街道の宿場町であった草加宿には旅人向けの茶店や物売りが軒を連ねるようになりました。そこで団子屋を営んでいた「おせん」というおばあさんが、お店で売れ残った団子をつぶして乾かして焼いて売ったところ大人気に。おせんさんが作ったので「おせんべい」と呼ばれるようになった、という説が有名です。

つまり、もともと丸く成形された団子をつぶして焼いたものなので丸い……それが、煎餅が丸い理由だといわれています。

もっとも、四角形や三角形では、炭火で焼いたときに細くなった角が焦げやすいという難点があるため、必然的に丸い形が好まれてきた、という見方も。おせんさんの偶発的な煎餅が、やってみたら理にかなっていたので現代まで続いている、と考えてよさそうです。

米菓子界を支えるツートップ・「おかき」と「あられ」の雑学

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米を使ったお菓子の有名どころに「おかき」と「あられ」があります。煎餅とどう違うのか、詳しいことは知らなくても、何となく区別がつく、という方も多いのではないでしょうか。「おかき」と「あられ」の定義とは?煎餅との違いはどこにあるのか?煎餅と共に人気を二分する両者の雑学、たっぷりお届けします。

「欠き餅」「御欠」?おかきの意外な歴史とは

「おかき」と聞いて、どんなお菓子を想像しますか?

煎餅と聞くと、丸くて大き目のものをイメージする人も多いと思います。ではおかきは?少し小さめで、丸ではなく四角かったり表面がごつごつした形……。米を原料としているお菓子ですが、お煎餅とははっきりとした違いがあるように感じられます。

おかきは漢字で書くと「御欠」。この字だと読みにくいと感じる人が多いのか、ほとんどの場合「おかき」とひらがなで表記します。確かに「御欠」ではどんな食べ物かピンときません。

もともとおかきは「鏡餅」から来ていると言われています。神様にお供えした後、固くなった餅を槌で叩いて割り、かけらを焼いて塩や醤油をつけて食べるという、いわゆる「鏡開き」の行事が由来なのだそうです。原材料はうるち米ではなくもち米ということになります。

欠いた餅なので「欠きもち」が本来の呼び名なのですが、神様にお供えしたものなので、丁寧に「お」を付けて「おかき」と呼ぶように。おかきは庶民が楽しみにしているお菓子のひとつだったようです。

小さい・上品・高貴な米菓子「あられ」

では「あられ」とはどういうものなのでしょうか。

何となく「小粒・小さいもの」というイメージを持っている方も多いと思いますが、概ね正解。おかきとの違いはサイズの違いと考えてよさそうです。「全国米菓工業組合」でも、小型のものを「あられ」、大型のものを「おかき」と表記しています。

あられは漢字で書くと「霰餅」。霰とは、空から降ってくる5mm程度の大きさの氷粒のことです。焼くと膨張して霰のような形になるので、このような名前が付いたと考えられています。

おかきがごつごつとした大ぶりな形をしているのに対し、あられは小粒で上品なイメージ。つぶしたお米を2~3cmほどのサイズに切って焼くか揚げるかしたもので、ある程度大きさが揃っています。より小さく、5㎜程度の大きさにカットしたものをお茶漬けの具として使うことも。サクサクとした食感が加わって、お茶漬けやより一層美味しく感じられます。

あられの材料はおかきと同じくもち米です。鏡餅に見られるように、もち米は古くから、お祝いの席などにお供えするおめでたい食べ物とされてきました。もち米をさまざまな儀式に用いる習慣は、奈良時代には既に始まっていたと考えられています。おかきもあられも、硬くなった餅を砕いて食べる習慣から発展したお菓子ですが、あられは宮廷行事など身分の高い人たちの間で広まっていったようです。

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