警察のずさんな操作と報道被害
この事件でも、またもや警察は初動捜査の誤りを犯すことに。家に農薬を保管していただけの近所の一般人に対して連日取り調べを行い、さらに家宅捜索まで実行。その農薬からサリンを合成することなど不可能であるにも関わらずです。
しかもメディアや週刊誌でさえ証拠や裏付けもないままに、さも真犯人であるかのように書き立て、その無責任な報道は過熱していきました。
実は長野県警のミスはもう一つありました。サリン生成に必要な薬物の購入ルートをいくつか探り当てたにも関わらず、まったく捜査に生かさなかったこと。実は購入ルートの末端にはオウムのダミー会社が存在していたはずなのに。それらもまた教団の巧妙な証拠隠滅によって闇に葬り去られることになりました。
この恥ずべきミスや冤罪報道は更にオウム真理教の犯罪を助長するものになったことは言うまでもありません。「これだけ大きな事件になったにも関わらず、結局はバレなかった。今度はもっと大きな事件を起こしても大丈夫」と麻原はほくそ笑んだことでしょう。
日本中を震撼させた大規模テロ【地下鉄サリン事件】
地下鉄サリン事件も含めてオウム真理教が引き起こしてきたテロ事件には、動機として一切悪びれたところがないことが特徴です。端的に言えば「悪いとは考えていない。むしろ良いことをした」ということでしょうか。そして松本サリン事件から9か月後、地下鉄サリン事件が起こることに。
強制捜査を免れるためのテロ事件
松本サリン事件後にも次々と凶悪事件を引き起こし、さらにはサリン生成のための薬品の流通ルートを暴かれつつあったオウム教団は、いよいよ警察の強制捜査が切迫していることを感じ取り、なんとか警察の目をかわすために躍起になっていました。
阪神淡路大震災の時に偶然捜査の手が緩んだ経緯もあり、大事件を引き起こすことによって今回もやり過ごそうとしたのです。その標的となったのが地下鉄霞ヶ関駅。教団が憎む公安や検察、裁判所関係の人間が大勢降りる駅だから。という安易な理由からでした。
そして地下鉄車内を選んだのは、「密室でガスも散逸しにくく、効果的に人を殺せるから」という理由で、オウムが実行したと思わせないように聖教新聞でサリン入りの袋を覆い隠し、創価学会の仕業に見せかけようとしたのでした。
強制捜査とオウム教団の崩壊
同時多発的に5列車の中でサリンが散布され、乗員乗客13人が死亡。負傷者6,300人という史上稀にみる大規模テロ事件に発展し、日本中を震撼させることになりました。部下から報告を聞いた麻原の言葉です。
「これはポアだからな。分かるな。」
「グルとシヴァ大神とすべての真理勝者方の祝福によってポアされてよかったね。」
あまりの身勝手さと悪びれなさにもはや恐怖を覚えるしかありませんね。
教団の思惑とは違い、事件の2日後には強制捜査の手が入りました。しかし警察はまたもや捜査に行き詰まり、決定的な証拠がないため麻原の逮捕には結び付きませんでした。幸いなことに、教団に対して不信感を抱いていていた実行犯の一人林郁夫が自転車窃盗の疑いで逮捕され、その自供によって解明に結びつきますが、もしそれがなかったなら、再び大惨事を引き起こしていたかも知れません。
オウム真理教のようなカルト集団を作らせないために
宗教というものが悪いわけではありません。人の心の隙や弱さに付け込む人間が悪いのです。美辞麗句や耳触りの良い言葉で人をだまし洗脳する。そして意に沿わない人間を排除しようとする。それがカルトなのかも知れませんね。しきりに格差社会が叫ばれている昨今、再びオウム真理教のような存在が生まれないとも限りません。無関心ではなく、常に心のアンテナを張って社会を見ていきたいものですね。