政治と経済の微妙な関係~基本からわかる「資本主義」と「民主主義」の違い
「資本主義」と「民主主義」の違いとは?
では、「資本主義と民主主義の違い」ってなんでしょうか?資本主義というのは市場原理による経済の制度・システムのことでした。民主主義は国民があるじとなった政治のシステムのことです。「資本主義と民主主義の違い」とは、経済の制度か政治の制度かという違い、ということになりますね。
ところが、問題はそんなに単純ではなかったりします。現代では資本主義の国というのはだいたい民主主義の国でもありますよね。アメリカ、イギリス、ドイツ、日本など……。だから「資本主義と民主主義の違いってなんだろう?」という疑問を持つ人が多いのだと思われます。
「資本主義」と「民主主義」の密接な関係
実はこの両者は密接な関係があるのです。なぜなら、近代になって民主主義が主流になったのは資本主義が原因だったから。資本家たちが金持ちになると、従来権力を握っていた国王や貴族に対抗する勢力となって、ついに革命を起こしたというわけなんです。だから、「民主主義は資本主義が生んだ」とも言えるんですね。資本家たちは商売に国が介入しないで自由に金儲けできたほうが都合がいいわけですから、民主主義の名の下で自由経済の制度が進められていきました。
資本主義の体制では自由競争こそ経済を発展させるのだというのが原則になります。「がんばって働いたり、能力が高い人がお金持ちになって、努力が足りない人は貧しい暮らしになる」というのは平等であるように思えますよね。ただ自由競争を進めていくと、どうしても勝ち組と負け組に分かれてしまいます。
そこで、「金持ちに有利なようにルールができているのに、貧乏人が切り捨てられるのは納得いかない」と思う人もいることでしょう。トランプの「大富豪」で例えると、もともと有利な手札を持っている人は勝ちやすいですが、最初から3とか4しか持っていない人はどんなにがんばったって勝てないわけです。
「資本主義」と「民主主義」は対立する!?
ところが民主主義が確立して、お金がない労働者も選挙で政治に参加するようになると、労働者階級の声も無視できなくなってきます。数が圧倒的に多いのは労働者のほうですから、あまりないがしろにすると資本主義の体制が倒されて、労働者による政権ができてしまうかもしれないからです。
そこで、資本主義の国でも労働者に配慮しないとやっていけなくなります。最低賃金とか残業代とか、週休2日制とか有給休暇制度、健康保険や年金といった福祉制度は、自由競争に国が口を出してルールを決めるわけですから、資本主義の原則には反しているんです。でも、こういう「社会主義」的な要素を取り入れないと、労働者の不満を抑えられなくなっていました。今の私たちから見たら、残業代が出ないとか休みがないとかいう会社はとんでもないブラック企業だと思いますよね。こういった労働者を守る制度が民主主義によって生まれました。
資本主義をガンガン進めていくと、弱肉強食の厳しい世界になってしまいます。それだと多くの国民の暮らしが苦しくなって、政治への不満がたまっていくので、「社会主義」的な政策が必要になるわけです。現在、多くの国では「資本主義バンザイ」という政党と、労働者の権利を主張する「社会民主主義」的な政党があって、どちらが政権を取るか競い合っています。つまり、民主主義と資本主義はある意味で緊張関係にあるわけです。
政治・経済の理解に必要な歴史的視点
民主主義と資本主義は全く別の物のようでありながら、実は密接な関係がありました。こういった歴史を踏まえると、政治や経済の世界も違って見えますよね。選挙で一票を投じる時にも、歴史的な視点を考えてみると参考になるのではないかと思います。