日本の歴史

【干支の歴史雑学】十二支とどう違う?暦の不思議と面白知識

十二支の順番を決める熾烈なレース!動物たちの熱い物語

これは日本に古くから伝わる、十二支に関する物語です。

おそらく、最初は十干と同じく、暦や方角を示すための文字に過ぎなかった十二支を、もっと世の中に浸透させるべく作られた物語ではないでしょうか。身近な動物たちがたくさん出てくるので子供たちにもわかりやすく、目論見通り長い間人から人へ語り継がれて今日に至ります。

その物語とは……。

昔々、神様が動物たちに「1月1日の早朝、一番最初に新年の挨拶に来た者から12番目までを、1年ずつ動物界のリーダーに任命します」と言い出しました。

そして1月1日の朝、動物たちは一路、神様のもとを目指します。1匹、また1匹と神様に挨拶を済ませ、12位までの順位が決定しました。決定した順位は以下の通りです。

1:子(ネズミ・鼠)/2:丑(うし・牛)

1盤目のねずみは子だくさんな生き物です。ハツカネズミという種類があるほどで、すぐどんどん子供が増えていきます。そんな様子から、ネズミは子宝の象徴とされ、子孫繁栄、行動と財という意味が込められているそうです。

十二支レースの物語ではネズミは少々ずる賢く、牛の背中に乗って楽して神様のもとへ移動しています。しかも、到着直前に牛の背中を飛び越え、1位でゴールしているのです。しかも、レースの日程をうっかり忘れてしまったネコに「1月2日スタートだよ」とうそを教え、ネコはレースに不参加となってしまいます。以後、ネコは騙されたことを恨んでネズミを追いかけまわしているのだそうです。

2番目の牛は古くから、農耕や荷物運びなど人の生活に近いところで役に立ってきました。文句ひとつ言わず重い荷物を運び、車を引き、畑を耕してきたのです。牛は力強さ、粘り強さ、誠実さの表れであるといわれています。

「自分は歩みがのろいから……」十二支レースの物語では、牛は前の日に出発して神様のもとへ向かいました。ネズミが背中に乗っているとも気づかず、ひたすら前進します。やった!1位だ!と思ったらぴょーんとネズミに追いこされて……でもネズミに食って掛かることもなく、2位に甘んじるところに牛らしさがにじみ出ています。

3:寅(とら・虎)/4:卯(う・ウサギ・兎)

3盤目のとらは大変力強い生き物です。昔から猛々しく神々しい動物といわれており、決断力、才知の象徴とされてきました。また、美しく輝く黄色い毛並みから金運・幸運が強いとも考えられています。

十二支レースの物語の中でも、とらは他の動物たちから一目置かれる頼りになる存在でした。誰よりも速く千里の道を駆け抜け、見事3番目に神様のもとへ参じたのです。前の日から出発していた牛、ズルをしたネズミの次にゴールしたのですから、みんなで同時にスタートしたのなら、とらが文句なしの1位だったに違いありません。

4盤目のウサギは、ピョンピョンと飛び跳ねるところと、可愛らしく温厚でおっとりしている様子から飛躍、景気向上、家内安全などの意味が込められています。

ウサギは十二支レースでもピョンピョンと飛び跳ね、俊足を活かして上位に食い込みました。

5:辰(たつ・竜)/6:巳(み・ヘビ・蛇)

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5番目の竜は、古代中国では権力の象徴として特別に扱われていました。皇帝のシンボルとして玉座を守り、神聖なものとされてきたのです。十二支の中では珍しく架空の生き物。竜は権力、正義感、信頼の表れであると考えられています。

十二支レースの様子を雲の上から見守っていた竜は、自分も参加したくなり、地上ではなく空から神様のもとを目指しました。そして見事5番目でゴール。晴れて十二支の仲間入りを果たしたのです。

6番目のヘビは、脱皮を繰り返し生命力が強いところから、死と再生の象徴であるとされています。見た目が不気味なため現代では何かと嫌われがちですが、昔話の中には恩返しをする蛇が登場したり、床下に蛇がいるとその家は安泰といわれたりと良いイメージも。日本古来の呼び方「へみ」が「へび」になったと考えられており、へみの「み」の部分が巳という字に関連付けられたようです。

7:午(うま・馬)/8:未(ひつじ・羊)

7番目の馬は牛と同様に、古くから人間と深く関わってきた生き物です。戦にも欠かせない動物でした。また、陽気で明るく闊達で、縁起がよく最先端を走るイメージが強いです。牛と間違えやすい「午」という字は、最初は「忤」という漢字が使われていたと考えられています。これは「さからう」という意味を持つ字で、これが午という字になり、これがウマと読まれるようになりました。しかし、なぜ馬があてがわれたのかはわかっていないようです。もしかしたら、身近な動物だったというだけで、深い意味はないのかもしれません。

8番目の未は、群れで生活する動物です。その様子から家族安泰や平和の象徴として扱われることがあります。「未」という字にひつじがあてがわれた理由も馬と同様、はっきりと理由があるわけではなさそうです。

レースでは、馬と羊は仲良く助け合って神様のもとへ向かっていました。足が速く力のある馬が羊を励ましながら山坂を越えたのだそうです。家畜として人とかかわりの多い動物同士、仲良く並んでゴールしたのもうなずけますね。

9:申(さる・猿)/10:酉(とり・鳥・鶏)

9番目の猿は、山の賢者・山の神の使いとも言われ、賢さ・好奇心を象徴する動物とされています。「申」はもともとは「呻」という字でしたが、後にわかりやすくするため猿という動物と関連付けたようです。

十二支レースでは、初めのうち、猿は犬と仲良く走っていました。ところが途中、細い橋をどちらが先に渡るかで喧嘩になってしまいます。レースでは猿が先にゴールしましたが、その後もずっと犬と仲直りすることはなかったようです。仲が悪いものの例えにある「犬猿の仲」という言葉から、このような物語が綴られたと考えられています。

10番目の鳥は、昔から非常に縁起の良い動物と言われていました。時を告げるという役割もあります。日本人にとっても非常に身近な馴染みのある生き物です。酉という字は現代でも、11月に各地の寺院や神社などで行われる「酉の市」という行事でも使われています。

十二支レースでは、喧嘩しっぱなしだった猿と犬の仲裁をしました。様子を見守っていた神様も、猿の次が犬では再び喧嘩になるだろうと、猿の次を鳥にしたのです。

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