ドイツプロセイン王国ヨーロッパの歴史

実は悲劇の哲学者?4つのエピソードでみる「本当のニーチェ」

【エピソード・その3】三角関係でまた破局

さて、ニーチェも人の子。当然恋にも落ちました。ただしこの落ち方がよろしくなく、いわゆる「三角関係」。ニーチェは、ザロメという女性に恋をしましたが、彼女にはレー(男性)というボーイフレンドもいました。最終的には、ザロメとレーが同棲を始めることで関係は破綻。恋に破れたニーチェは、心身の調子を乱すことになります…。

ただ救いなのは、こういった失恋ののち、後に代表作となる「ツゥラトゥストラはこう語った」が生まれたこと。恋をしたことが、ニーチェの哲学者としてのモチベーションやインスピレーションに火をつけたのかもしれません。残念ながら、本は売れませんでしたが。

【エピソード・その4】狂気のうちに過ごした晩年

多くの著作物を書き上げ、さあここから…というところで、ニーチェの人生は一つの区切りを迎えます。ニーチェは、訪れていたトリノ(イタリアの都市)の広場で卒倒。その後亡くなるまでの約10年は、いわゆる精神障碍者として過ごしました。

皮肉なことに、精神を患ったちょうどその頃から、世間のニーチェに対する評価は高まっていくことになります。そして19世紀が終わりを迎えようとしていた1900年、ニーチェは55歳でこの世を去りました。やがて20世紀、フロイト、ユング、フーコー、デリダ、ハイデガーをはじめ、分野を超えた多くの知識人が、哲学や社会学、心理学などの世界で彼の影響を受け継いでいくことになるのです。

ニーチェもまた、ひとりの人間だった…

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このように見てくると、「神は死んだ」「事実というものは存在しない。存在するのは解釈のみである」…など、多くの名言を生んだ人らしからぬ、とっても人間くさいニーチェ像が浮かび上がってきます。いえ、むしろこのような人間くささが、卓越した思想にも結び付いていったのではないでしょうか。

哲学者と言えば「いつも難しいことを考えている人」というイメージがあるかもしれません。しかし、「ただの人間」だからこそ哲学ができるとも言えるのではないでしょうか。

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