イタリアヨーロッパの歴史

「枢機卿」って何?ローマ・カトリックの重役のお仕事が5分でわかる!

枢機卿の人数制限は120人

聖俗問わず良さげな人物を選んでいたバチカン。16世紀の宗教改革以降は政治的権力はどんどん下がっていきます。19世紀のイタリア統一にともない発生した領土紛争ローマ問題(「バチカンの囚人」とも。ムッソリーニがバチカン市国を作ることで解決)など国際的な立ち位置も難しくなりました。

枢機卿にはお給料もありますから、たくさんいてはバチカンが破綻してしまいます。そこで必然的に生まれるのが枢機卿の定員です。16世紀のカリスマ教皇シクストゥス5世は、規模が拡大しつつあった枢機卿の定員を70人に制限します。

20世紀に入り、司祭叙階を受けていない人が枢機卿になることはご法度になりました。ヨハネ23世が70人の枠を取り払い枢機卿を増員。その次の代のパウロ6世が、80歳未満の枢機卿の定員を120名までとするという決まりを作りました。この「120名」はあくまで80歳未満の人数で、80歳未満の時に枢機卿になって長生きした人もたくさんいるため、実際は120名よりもずっと多い数が枢機卿団にいます。欠員が出るたびに補充されるんですよ。

枢機卿のあんな仕事、こんな仕事

image by iStockphoto

枢機卿のお仕事は?聖職者のお仕事というとミサ(礼拝)をあげたり信者の告解(ざんげ)を聞いたり、くらいしかイメージが湧きませんが、枢機卿はとってもアクティブに活動します。いつもどこに住んでいるの?彼らが会議して決めることって一体?そして一大イベント「コンクラーヴェ」とは。枢機卿の業務内容に迫ります。

「聖人カレンダー」は枢機卿が決める

聖人カレンダーを知っていますか?カトリックの暦には1日1人、聖人が割り振られています。たとえばフランシスコ・ザビエルは12月3日、大天使ミカエルは9月29日といった風に。

教皇庁は、信仰や教会への貢献が著しかった人物をまず「福者」として認定。この人が聖人にふさわしいか数年〜数十年のスパンで審議します。聖人になるには厳しい基準をクリアしていなければならず、影で肉体関係を作っていなかったか、競技をきちんと守って清く正しい生活をしていたか、死後に奇跡を起こしたかなど繰り返し審議が行われるのです。

この聖人カレンダーは実は時代ごとに変わっています。中世の頃にわりと見境なく列聖してしまったことから聖人が増えすぎて「諸聖人の日」を作ってまとめてお祝いしているほど。時代のニーズに合わせて、伝説上の存在で実在が疑われる人物が外されたり。しかも聖人認定に関しては政治的、国際的な事情が絡むのでとってもセンシティブ。神学的な方面からも熱心な議論が行われるんですよ。

バチカンのどこに住んでいるの?

現在120人が定員の枢機卿。彼らはどこに住んでいるのでしょう?答えは、自分の担当教区とバチカンを行ったり来たりです。ちょっとややこしいのですが、重責を担う枢機卿の立場について説明しましょう。

カトリックは世界中を「教区(司教区)」に小分けにして統括しています(日本にあるのは16教区)。世界中の「支店(教区)」を管理するのが「本社」格の教皇庁(バチカン)です。枢機卿は支店長(教区長、司教)と本社役員を兼ねる重役。今日、自分の教区でミサをあげ説教をしたかと思えば明日はバチカンで会議、といった形です。

2020年現在ローマ教皇であるフランシスコは枢機卿時代、電車に乗ってローマ市内から教皇庁へ出勤、アパートで自炊するという驚愕の庶民生活を送っていることで世間の注目を集めました。一方でバチカン市国内の宮殿に住みハイヤーを使う枢機卿もいます。人それぞれといったところですね。

一世一代のイベント、教皇選出会議「コンクラーヴェ」

枢機卿の一世一代の大仕事、それがコンクラーヴェ(コンクラーベ)です。ローマ教皇は基本的に終身制のため、亡くなってから新任者を選ぶことになります。この「使徒座空位」期間は教皇の代わりに枢機卿が教皇庁を運営。そして新しい教皇を選ぶために教皇選出選挙「コンクラーヴェ」が行われます。

直近だとヨハネ・パウロ2世が亡くなった後と、名誉教皇となったベネディクト16世が生前退位した後のコンクラーヴェが記憶に新しいのではないでしょうか。枢機卿たちは鍵のかかった一室に集まり、話し合いで新しい教皇を決めます。決まるまでは一歩も外に出ることはできません。未決に終わった日は黒い煙、新教皇が誕生した場合は白い煙を煙突から出して発表することは有名ですね。

ローマ教皇は枢機卿からしか選ばれません。ちなみにそんな重要な役職の枢機卿日本人も過去に6人、排出されているんですよ。そのうち2018年に枢機卿に任命された前田万葉司祭枢機卿は、大阪教区の大司教。現在も日本の大阪教区とバチカンを往復して仕事をこなしています。

次のページを読む
1 2 3
Share: