アイルランドの独立
アイルランドの抵抗が強くなってきた19世紀から20世紀にかけてイギリス政府はアイルランドを独立させるための自治法案を提案します。ところが、この自治法案はアルスター地方のプロテスタント系住民が反対。アイルランドとして独立するよりもイギリス領に残ることを主張するようになりました。
もうかなり昔に支配されていたアルスター地方と人たちは数多くの利権を手に入れており、アイルランドとして独立したらその全ての特権を失ってしまうのではないかという恐れを持っていたとされており、そして、1913年にはアイルランドからの独立を防ぐためにアルスター地方のプロテスタント住民たちは自らの権利と安全を守るためという目的で市民有志からなるアルスター義勇軍を設立します。
この義勇軍は下は17歳から上は65歳という大所帯。最盛期には10万人にもなり、一つの軍隊に匹敵するほどの武力を得ていくようになったのです。一方でアイルランドの独立を願う人たちはアルスター義勇軍に対抗する形でアイルランド共和軍(IRA)を設立。IRAは正式な軍事組織として本格的に活動を開始することになります。
こうしてそれぞれが自分の主張を押し通していきましたが、そんな中で1914年に第三次アイルランド自治法案が成立することに。1919年にはアイルランドの独立のための国民議会が開設されるようになり、ついに独立へのカウントダウンが始まることになります。しかし、この時期においてもアルスター地方がイギリスになるのかアイルランドになるのは決まっておらず、この問題は棚上げとなってしまいました。
そして1921年には北アイルランド議会が召集されますが、そうした状況のもとプロテスタントとカトリックの対立はさらに激化します。アイルランドはアイルランド自由国として独立を果たしましたが、ここから一気に紛争の方面へと進んでいくことになるのです。
北アイルランド紛争
こうして独立したアイルランドでしたが、北アイルランドは依然としてイギリスの領地となっていました。さらに北アイルランドの人口である150万の3分の2がプロテスタントであり、そのため北アイルランドではカトリックが少数派となっていました。カトリックはこの少数派の立場で迫害を受けないようにカトリックの差別撤廃を目指す公民権運動が次第に起こっていくようになります。
これに南北統一を掲げていたアイルランド共和軍(IRA)が介入。カトリックの保護とさらにはアイルランドの統一を目指して北アイルランドよ至る所でのテロ活動を起こしていくようになります。こうした混乱の中で北アイルランドは1972年から27年間イギリス政府による直接統治下に置かれることになりました。
しかし、この直接統治に主要な法律はイギリス下院で成立しのですが世論の支持を得られず失敗。これを受けてイギリスは武力による本格的鎮圧に乗り出していき、これに反発したIRAは武装抵抗を宣言してイギリスの首都であるロンドンで爆弾テロ事件を起こすなどの過激的な行動を取っていくことになります。
イギリスはなんとかこの時代を収集しようとして1973年12月に南北アイルランドとイギリスの三者会談を開催して翌年に協調していくことを決定しましたが、これに反対する IRAは両国政府に対するテロ活動を強化していくなど事態はますます深刻化していきました。
ベルファスト合意の締結
こうしてテロ活動が激化してイギリスの悩みの種となっていった北アイルランド問題でしたが、イギリスはついに多くの命が失われた紛争を終わらせるためにこの紛争を終わらせることに。この当時のイギリスの首相であったトニー・ブレア首相やアメリカのビル・クリントン大統領らが主宰して北アイルランドについて協議する会議が行われることになり、そこでベルファスト合意が結ばれます。
このベルファスト合意によってアイルランドは北アイルランドを諦めて和平して解除を行い正式にイギリスの一部になりました。また、アイルランドの意見や国民の意見も尊重することとなり、住民の合意をなしに北アイルランドの地位の変更を行わないことに加えて、北アイルランドの住民はイギリス、アイルランド、あるいはその両方の国籍を取得できるようになりました。
さらにアイルランド側でも最大の懸念であった宗教問題を終結するために憲法を改正。カトリックとプロテスタントが共同して政治を行う体制となります。
そして、アイルランドとイギリスがともにEUに加入すると国境が自由化したことでかつての紛争は完全に静まったのでした。しかし、2016年にイギリスがEUを離脱し、2020年に正式に発効された事で再びアイルランド問題が起こるのではないかという懸念も存在しています。
アイルランド問題は今も長引いている
一応、ベルファスト合意によってアイルランド問題は終結しましたが、イギリスがEUを離脱したこともあって国境の自由化がなくなり再び問題が起こるのではないかという懸念が存在しています。
果たしてアイルランドはどこに向かうのでしょうか?今後の動向に注目です。