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韓国経済の飛躍的な成功を成し遂げた「漢江の奇跡」を元予備校講師がわかりやすく解説

飛躍的に経済を成長させた「漢江の奇跡」

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5・16軍事クーデタで政権を握った朴正煕は、日韓基本条約を締結し西側陣営の一員として日本との提携を強めました。日本からの資金を得た朴正煕は社会インフラを整備するとともに産業の育成や工業化を推進。「漢江の奇跡」とよばれる高度経済成長を実現します。同時に、ベトナム戦争ではアメリカ側として出兵。戦争特需を背景に、さらに韓国経済を成長させました。

日韓基本条約の締結

李承晩時代、李承晩が日本との了解を一方的に定める「李承晩ライン」を設定したことなどにより日韓関係は悪化していました。政権を握った朴正煕は日本との関係改善を図ります。

1965年、朴正煕大統領は日本の佐藤栄作政権と交渉し、日韓基本条約を締結しました。日韓基本条約では両国の国交樹立や過去の韓国併合条約の執行などが宣言されます。加えて、日本は韓国を朝鮮半島唯一の政権であると認めました。

また、日本側は韓国に対し無償で3億ドル、有償で2億ドルの経済援助を行うことに同意します。日本側はこれをもって賠償問題は終結したとの立場をとりました。

朴正煕は日韓基本条約の締結により、国内経済を再建するための原資を得ます。ただし、竹島問題や李承晩ラインなど両国間の領土問題は棚上げされました。

ベトナム戦争への参戦

1961年、朴正煕政権はアメリカに接近。ケネディ大統領に対し韓国軍のベトナム派兵を申し入れました。ベトナムではアメリカの支援する南ベトナムが南ベトナム解放戦線(ベトコン)の抵抗に手を焼いています。それを見越しての申し出だったのでしょう。

1964年、ケネディ暗殺後に成立したジョンソン政権韓国軍のベトナム派遣を承認したため、韓国軍のベトナム派兵が決まります。派兵される韓国軍に対しアメリカは戦闘費用を支払いました。また、アメリカは韓国参戦の見返りとして韓国製品の輸入規制緩和経済支援を行います。

アメリカによってもたらされた経済的恩恵は日本が朝鮮戦争で得た特需と同様、国の経済復興にとって大きなプラス要因となりました。朴正煕政権はベトナム戦争への参戦と引き換えに大きな経済的メリットを得たといえるでしょう。

社会インフラの整備と韓国経済の急成長

日韓基本条約の締結やベトナム戦争への参戦などで経済成長の原資を得た韓国では、朝鮮半島で破壊された社会・産業のインフラ整備が行われます。交通面では大韓航空の民営化や京釜高速道路の建設などが実行されました。産業面では昭陽江ダムの建設や浦項製鉄所の建設などが行われます。

また、三星(サムスン)や現代(ヒュンダイ)、LGグループ、ロッテグループなどの財閥が急成長。韓国経済をけん引しました。「漢江の奇跡」の前、韓国のGDPは北朝鮮を下回っていましたが、経済成長によって北朝鮮との経済格差を逆転させます。

朴正煕が公約した国民所得を10倍にするという目標はわずか3年で達成され、韓国経済は飛躍的な成長を遂げました。その結果、首都ソウルには人口が集中するようになります。

漢江の奇跡後の韓国

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韓国の急激な経済成長である「漢江の奇跡」を成し遂げた朴正煕は1979年に暗殺され、彼の独裁政権は突然の終わりを迎えます。朴正煕の死後も全斗煥、盧泰愚による保守派の軍事政権が続きました。その後、1988年にはソウル五輪を開催し1991年には北朝鮮と共に国際連合に加盟するなど韓国は国際的な地位を高めていきます。

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