さらなる高みを・独裁政治と暗殺
内乱を制圧し、ローマ国内を平定したカエサル。内政の整備と改革に取り掛かります。紀元前44年、自ら終身独裁官に就任し、権力を自分に集中させて体制強化を図りました。この一点集中体制が、のちの帝政ローマへとつながっていったと見られています。
確かに民衆の人気は絶大なものでしたし、政治家としての能力に長けてはいました。しかしこのままでは、共和政体制は独裁政治に代わってしまいます。この独裁状態に危機感を抱くものも少なくありませんでした。そのうちの一人が、軍人であり政治家でもあったブルータス(英語読み:ブルトゥスと発音することも)です。
ブルータスにとってカエサルは父親同然の存在。実はブルータスの母親とカエサルは愛人関係にあったと伝えられています。子供のころから面倒を見てもらっていた恩人であり偉大なる将軍カエサル。しかし……。
カエサルは王になるつもりだ、皇帝になって君主政治を行うつもりだ、そうなったら共和政政治はどうなる?民衆はどうなる?カエサルの野心を懸念する人々が集まり、ついにカエサル暗殺計画が決行されることとなります。
紀元前44年3月15日、カエサルは元老院会議の会場となっていたポンペイウス劇場で、十数人の刺客に囲まれ、刺殺。刺客の中にブルータスの姿を見つけたカエサルは思わず「ブルータス、お前もか」と叫んだのだそうです。
覇者カエサル・古代のヒーローは人間味あふれる野心家だった?!
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「カエサル」という名称は、その後の帝政ローマ時代の皇帝が名乗る称号のひとつになり、ドイツ圏の「カイザー」などの呼称はこれに由来するのだそうです。野心むき出しの印象もありますが、それだけ自分の欲望に素直でまっすぐな、魅力的な人物だったのかもしれません。やることが派手な政治家は人々の記憶に残りやすいし後世に語り継がれやすい。人気が高いのもうなずけます。まったく別次元の話ではありますが、太閤・秀吉とちょっと似ているところがあるのかな、とも感じました。