4-1.イギリス企業による原油採掘
1998年にフォークランド諸島近海の海底で原油が発見されました。2010年より複数のイギリス企業が試掘に取り掛かりましたが、多くは期待外れの結果に終わっていたのです。
ところが2016年、諸島の北方にあるシーライオン油田から、10億バレルにのぼる莫大な埋蔵量が確認されました。日本で例えるなら3年間の消費量にあたる量ですね。
これでイギリスはますますフォークランド諸島を手放す理由はなくなりました。建前上はあくまでも島の住民が現状維持を希望するなら、フォークランド諸島はイギリスに帰属するべきだという考えだそうですが。
領土問題に関してはイギリスは一切妥協しないという姿勢ですので、アメリカの民間企業ともタッグを組んで、既成事実にしてしまおうということなのでしょう。
4-2.ついにアルゼンチンの主張が認められる
いっぽうアルゼンチン側も指をくわえて見ていたわけではありません。領土問題に関して仲裁するべき立場なのが国連なのですが、ついにアルゼンチンの主張を全面的に認めてしまったのです。
「海底地殻が陸地のそれと同じであれば、審査の末に延伸を認める」ということを大陸棚限界委員会は規定していますが、アルゼンチンから伸びる大陸棚が350カイリあるということを正式に承認したのでした。
350カイリということは、フォークランド諸島がすっぽりと入ってしまいます。すなわち諸島がアルゼンチンの領土だということを国際公的機関が認めたということに他なりません。
これに対してイギリス側は、「国連委員会には領土の主権を決める権利は持っていない」と反発していますが、アルゼンチンに先を越された形となっていますね。
4-3.双方の落としどころは見つかるのか?
とはいえイギリス側もフォークランド諸島近海の採掘を開始していますし、今さら退くに引けないでしょう。双方の主張の落としどころや妥協点を見い出すことが、紛争解決の近道なのかも知れません。
最もクローズアップされているのが海底油田ですから、共同統治や共同開発などを推し進め、両国が経済的にウィンウィンの関係になることが最善だといえるでしょう。
日本とロシアの間でなかなか進展しない北方領土問題も、共同経済活動を軸として問題解決の糸口にしようとしていますし、双方の主張の溝が埋まらない以上は、やはり何らかの妥協点を見つけねばならないのです。
戦争という最悪の手段を取らないためにも、国の指導者は熟慮すべきことではないでしょうか。
フォークランド紛争が遺したもの
紛争が終結したものの、領土問題の根本的解決にはまるで至っていません。まさに問題は棚上げ状態で、いつまた新しい紛争が起こるかわからない火種を抱えているわけです。尖閣諸島問題や北方領土問題も同じ要素を抱えた問題ですが、やはり双方が納得できる落としどころを探すべきではないでしょうか。今のフォークランド諸島は、自然豊かでペンギンやアザラシなどの楽園といえる場所ですから、観光資源を生かすことや、海底・水産資源を活用する術を両国がともに考えていける間柄になれば良いのではないでしょうか。