その他の国の歴史アフリカ

悠大なナイル川のほとりで繁栄した「古代エジプト文明」の歴史をわかりやすく解説

異民族ヒクソスが侵入しエジプトの統一は崩壊した

中王国時代の末期、西方の民族移動に押される形で中東に流入したヒクソスは下エジプトに侵入します。ヒクソスはエジプトにはなかった騎馬や戦車の技術を持っていました。

軍事的に不利で、王朝としての力も衰退していた中王国はヒクソスの侵入を防ぐことができません。そのため、メンフィスなどの下エジプトはヒクソスが支配するようになりました。

下エジプトを支配したヒクソスは上エジプトのテーベを目指しましたが、テーベを支配する現地政権はヒクソスに抵抗。そのため、ヒクソスはエジプト全土を支配することはできませんでした。ヒクソスが下エジプトを支配した時期を第二中間期といいます。この第二中間期はおよそ100年に及びました。

古代エジプト文明の最盛期、新王国時代

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テーベの地方政権だった第18王朝は、異民族であるヒクソスを退け上下エジプトの統一を100年ぶりに達成しました。エジプトを再統一した第18王朝以降を新王国時代とよびます。新王国時代は古代エジプトの最盛期。国土をパレスチナ方面に広げ、ヒッタイト王と中東の覇権をかけて争ったのもこの時代です。

ハトシェプスト女王とトトメス3世

新王国時代、古代エジプトでただ一人の女王が即位します。それが、ハトシェプスト女王です。ギリシア人の王朝であるプトレマイオス朝ではクレオパトラ女王が有名ですが、古代エジプトで女性がファラオになることはありませんでした。

彼女はトトメス1世の娘でトトメス2世の妻、トトメス3世の母です。ハトシェプスト女王の治世は穏健で平和外交が展開されました。

ハトシェプストの死後に実権を握ったトトメス3世は「エジプトのナポレオン」の異名を持つ優秀な軍人です。トトメス3世はパレスチナ方面にあったカナン地方の連合軍をメギドの戦いで打ち破り領土を拡大しました。

メギドの戦いの様子はカルナック神殿に記録され、現在の私たちも詳細を知ることができます。トトメス3世の時代、エジプトの領土は最大となりました。

宗教改革を実行したイクナートン

新王国が強大となると、ファラオたちの貢物を受けていたテーベのアメン神官団は大きな勢力を持ち、王位継承にまで影響を及ぼすようになりました。これに対し、アメンホテプ4世はテーベとメンフィスの中間地点に新都テル=エル=アマルナを建設。アメン神官団の影響が強いテーベから遠ざかります。

さらに、アメンホテプ4世は新都でアトン神による一神教を国民に信仰を強制。自らの王の名もイクナートンと改名します。イクナートンによって進められた宗教改革をアマルナ改革といいました。

この時期、写実的なアマルナ美術が栄え、古代エジプト史上でも異彩を放ちます。しかし、アマルナ改革はイクナートンの死とともに挫折。アトン信仰はすたれ、次のツタンカーメンの時代にはアメン信仰が復活しました。

黄金のマスクで知られるツタンカーメン王

イクナートンの死により、9歳だったツタンカートンが即位します。アトン神の名に由来する名を持った王でしたが、間もなく、アメン神に由来するツタンカーメンと改名しました。

ツタンカーメンの名が一躍世界に知られるようになったのは、彼の墓がほとんど無傷の状態で発見されたからです。ツタンカーメンの墓がある王家の谷には多くのファラオが葬られていました。1922年11月、イギリス人考古学者のハワード=カーターはほぼ無傷の状態のツタンカーメンの墓を発見します。

一部の宝石は盗掘の被害を受けていたものの、ツタンカーメンの墓の副葬品はほぼ完全な形で残されていました。ツタンカーメン王が着用していた黄金のマスクや豪華な副葬品はカイロのエジプト考古学博物館に収められています。

カデシュの戦いで勝利しエジプトの力をオリエント全土に示したラムセス2世

紀元前13世紀に君臨したラムセス2世はエジプトでも有名なファラオの一人です。ラムセス2世は当時としては驚くほど長命で、90歳まで生きました。長い治世の前半はヒッタイトに奪われたシリア奪還の戦いに費やされます。

エジプト新王国は現在の小アジアを支配していたヒッタイトとシリアをめぐって争っていました。紀元前1286年、ラムセス2世はエジプト軍をひきいてシリアに進出。カデシュでヒッタイト王ムワタリの軍と対峙します。戦いはヒッタイト優位に展開しますが、ラムセス2世の奮戦によりエジプト軍が盛り返しました。

カデシュの戦いの後、エジプト新王国とヒッタイトは平和条約を締結。相互不可侵などを約束しました。ラムセス2世の治世の後半は建設に明け暮れます。もっとも有名なものはナイル川上流に建てられたアブシンベル神殿。神殿の威容はラムセス2世の威光を世に示したことでしょう。

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