平安時代日本の歴史

3分でわかる!落窪物語のあらすじ・和歌・おすすめマンガまでご紹介

4-2.ようやく気付いた中納言家の人々

結局、中納言家の言い分は聞き入れられず、衛門督家は新しい屋敷に引っ越したのでした。衛門督は中納言をいささか気の毒に思いながらも、憎い北の方が悔しがる姿を想像して留飲を下げたのです。

それからしばらくして中納言家の荷物が返却されました。戻ってきた荷物を確認していた北の方は、そこでようやく気付きます。むかし北の方が落窪の君から奪った鏡箱があることに。

鏡箱は落窪の君の亡き母の形見の品。彼女が助け出された際に一緒に持ち出していたものだったのです。

それを見た北の方は、落窪の君が衛門督と一緒にいること、そしてこれまでの数々の嫌がらせは復讐のためだったことを知って激怒しました。いっぽう中納言は姫をおろそかに扱ってきたことを大いに悔いました。

4-3.落窪の君と中納言たちとの再会

そこまでしておいてから、衛門督は新しい屋敷に中納言と長男を招き入れます。衛門督は二人にこれまでのいきさつを懇々と説明し、落窪の君に対する非道な仕打ちや扱いを非難しました。

「なぜ私が事あるごとに嫌がらせをしてきたのか、あなたたちにわかりますか?私の妻は優しすぎるからそんな真似はできません。ならば自分がしようと考えた。それだけのことですよ。」

「だからこそ今日は、あなたたちに言っておかねばならないことを伝え、最初から土地の権利書はお渡しするつもりだったのです。」

するとそれを聞いた中納言は大いに恥じ入りました。

しばらくして落窪の君も姿を見せ、久しぶりの再会となりました。中納言はこれまでのことを深く謝罪し、落窪の君もまたそれを許しました。玉のようなかわいい孫とも対面し、中納言と長男は大いに歓待を受けて屋敷を後にしたのです。

4-4.中納言家の人々との和解

こうして衛門督家と中納言家は和解し、中納言たちも落窪の君に会いに衛門督の屋敷を頻繁に訪れるようになりました。そして北の方も、嫌がらせをしてきたのは落窪の君の本意でないことを知ると、怒りもおさまって徐々に手紙のやり取りをするようになったのです。

衛門督の姉が帝の妃でしたが、やがてその皇子が新しい帝となりました。衛門督はさらに昇進し、今度は大納言となりました。

ある時、年老いた中納言のために「八講の儀」が執り行われることになり、大納言たちは中納言家へ渡り、本当に久しぶりに落窪の君は北の方と対面したのです。

北の方は過去の行いを謝罪し、落窪の君もまたそれを許しました。八講の儀は盛大に行われ、中納言も「本当に立派な婿を迎えたものだ」と涙を流して喜びました。

「三千年に なるてふ桃の花盛り 折りて挿頭さむ 君がたぐひに」

(三千年に一度実がなるという桃の花が花盛りとなった。花の枝を折って髪に挿し、御長寿のあなた様にあやかろうではないか)

4-5.中納言の古希の祝い

大納言にとって中納言は義理の父にあたります。これまでしてきた数々の嫌がらせの罪滅ぼしとして、年老いた中納言のために古希の祝いを思いつきました。

「これまで嫌がらせは何度もしたが、うれしいことはまだ一度しかしていない。ぜひ喜ばせてあげよう」

そして祝賀の日、大納言は財力にものをいわせて盛大な祝いの宴を執り行いました。最近は伏せがちだった中納言も、これには喜び、かなり年若くなったように見えたそうです。

5.【第4巻】そして大団円へ

image by PIXTA / 41377200

これが最終章となります。一族の栄達と幸福な生活。シンデレラストーリーはやはりハッピーエンドしかないでしょう。

5-1.中納言の昇進

中納言はもう七十歳。だんだんと弱くなっていました。やがて気弱なことも口から出るようになります。

「私はこのまま中納言の位のまま死んでいくのか。これも因果応報なのかも知れない」

その言葉を伝え聞いた大納言はちょっと困ります。大納言の位に就けるのは人数が決まっていて、欠員が出るか誰かに譲ってもらうしかないのでした。そこで大納言は考えました。

「私は大納言の他に左大将も兼務しているので、自分の大納言の位を譲ればいいじゃないか。」そう考えた大納言はさっそく帝へ奏上します。

やがて昇進が許されると聞いた中納言は、これまた涙を流して大いに喜びました。そして中納言は弱った体をおして内裏に参内し、晴れて大納言となったのでした。

5-2.中納言の死

昇進して、ようやく安心したのか中納言(新大納言)はとうとう亡くなってしまいます。やがて葬儀も済み、四十九日も終わると遺産の分配が始まりました。

中納言はあらかじめ遺言で、屋敷や荘園を含む全てのものを落窪の君にに差し上げるとしていましたが、それを聞いた左大将と落窪の君は、それでは北の方はじめ姫たちもお困りだろうと固辞しました。

そして住んでいた屋敷も中納言家に変換することにしたのです。これを聞いて中納言家はたいそう喜びました。

5-3.落窪の君の功徳

中納言の長男から、屋敷が元通り自分たちのものになると聞いた喜んだ北の方、すこし嫌味を込めてこう言いました。

「どうせ落窪の君の口添えなんでしょう?」

これを聞いた長男は深々と嘆息し、改めて母に向き合いました。そして懇々と説教したのです。

「あなたは落窪の君をいじめたことも忘れ、その人徳すら分かろうとせず、いったい誰のおかげで自分たちが昇進できたと思っているのですか!」

この期に及んでそんな言いぐさしかできない母親を、長男は恥じ入るのでした。

やがて年が改まり、左大将はついに左大臣に昇進しました。故中納言の息子たちも次々に朝廷の要職に就いて昇進していったのです。これはまさに落窪の君の功徳であるといえましょう。

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明石則実