ギリシャヨーロッパの歴史

水瓶座(みずがめ座)にまつわる神話は?星座の特徴や見つけ方も解説

夜空を彩る星々が織りなす美しい星座……その歴史は古く、5000年以上も前に遡るといわれています。メソポタミアやエジプトなど古代文明を築いた人々は夜ごと空を見上げ、明るく輝く星々をつないで物語を紡いでいました。確かに星座には物語がつきもので、特にギリシャ神話とのつながりは深いです。今回はそんな星座の中から、みずがめ座(水瓶座・Aquarius)についてお話しいたします。

麗しき美少年の悲しき物語~みずがめ座のギリシャ神話

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黄道12星座の占いに登場する星座には、おひつじ座やおうし座、やぎ座、ふたご座など、動物や人間の形をイメージしたものが多いですが、では、みずがめ座とはどういうものなのでしょうか。「みずがめ」とは亀のことではなく、水を入れる壺のようなもののことです。とても不思議な星座・みずがめ座の神話の世界へご案内いたします。

みずがめ座とは?瓶(かめ)を持った男性の星座

みずがめ座は、水瓶を持つ男性をかたどった星座です。

最古の星座のうちのひとつと考えられており、ギリシャ神話よりもっと古い、シュメール時代には既に水瓶を持つ人の星座が見出されていたといわれています。星座の形は非常にシンプルですが、男性が右手に水瓶を逆さに持ち、その水瓶から水が流れ落ちている様子をイメージしているのです。瓶からこぼれた水は、みずがめ座の下(南)に位置する「みなみのうお座」という星座へと続いています。

星と星を結ぶ星座線の右側が男性の上半身、左側の長く下に伸びる線は流れ落ちる水を表しているのです。

この星の並びからどのようにして人間の姿を見出したのか、古代の人々の想像力の豊かさには驚かされます。星座の成り立ちについて詳しいことは伝わっていませんが、今も昔も変わらず、水が貴重なものであったという証なのかもしれません。水瓶は貴重な水源の象徴として描かれた可能性もあるようです。

ゼウスに愛された美少年・ガニメデスがモデル

みずがめ座の中で水瓶を持つ人物については諸説ありますが、ギリシャ神話ではガニメデス(ガニュメデウス、ガニメド、ガニメデとも)であるといわれています。わし座の神話の中にも登場する、トロイ国の美少年です。

ガニメデスの美しさは、オリンポスの神々の間でも有名になっていました。

ある日、ガニメデスがトロイの山で羊の番をしていると、どこからともなく大きな黒鷲が飛んできて彼をさらってしまいます。この鷲の正体は全知全能の大神ゼウスでした。ゼウスはガニメデスの美しさに魅せられ、手元に置きたいと目論んだのです。ガニメデスはオリンポスの山に連れてこられ、永遠の命を与えられました。そして酒宴の席などで神々にお酒を注いでまわる仕事をしながら、歳をとることなく暮らしたと伝わっています。

しかしガニメデスの両親は、息子が突然いなくなってひどく悲しみました。気の毒に思ったゼウスが、いつでも息子の姿を見ることができるようガニメデスの姿を星座にしたのだそうです。

星座とギリシャ神話の関係とは?

ギリシャ神話では神々をも魅了する美しい少年の物語が伝えられていますが、ギリシャ神話よりもっと古い時代、例えば古代メソポタミアでは、この星座が太陽の位置にある2月が雨季となることから、水と深い関係があると考えられていました。またエジプトでは、この星座の水瓶から水がこぼれ落ちるため、大河が氾濫し洪水が起きるのだと考えられていたのだそうです。

星座とはギリシャ神話がもとになっているものと思いきや、みんながみんなそうとは限りません。しかし、ギリシャ神話に関連付けられた星座が多いのはなぜなのでしょうか。

古代の人々は様々な思いを抱きながら星空を眺め、瞬く星をつないで地上の事象になぞらえていました。やがて貿易の発展と共に星座の物語も海を渡るようになり、紀元前15世紀頃から語られるようになったギリシャ神話と結びついていったようです。世界各地でそれぞれ発展してきた古代の星座は、2世紀前半のギリシャの天文学者プトレマイオスによって48にまとめられ、整理されていきました。この48星座は、私たちが慣れ親しんでいる現代の星座の原点にもなっています。

このように長い歳月を経て、多くの星座がギリシャ神話と結びついていきました。自由な神様たちが織りなすロマンチックなギリシャ神話の世界は、銀河を彩る星座と重なりやすかったのかもしれません。

どんな星座?みずがめ座の特徴と探し方について

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古代の人々の想像力によって誕生したみずがめ座ですが、実際には宇宙のどのあたりにあるのでしょうか。実はこの星座、最古の星座のひとつと言われていますが、実際に夜空で見つけることが難しくもあるのです。観測できる季節や位置、探し方なども含めて、みずがめ座の特徴について解説します。

明るい星は少ない?みずがめ座を構成する星々とは

みずがめ座は、他の黄道12星座の星座と比べると少しばかり探しにくい星座です。理由はいくつかありますが、かなり広範囲に広がる大きな星座であること、明るい恒星がないので人間の肉眼で見つけにくいことなどが挙げられます。

一番明るいとされる「みずがめ座β星」でも3等星で、他の星も3等星か4等星。みずがめ座には、すぐ見つけられるような明るく目立つ星はありません。夜でも明るい街中で、みずがめ座を見つけることは難しいでしょう。また、星と星が離れているので、全体像をつかむことが難しい星座ともいわれています。

恒星は控えめですが、みずがめ座には「らせん星雲」という惑星状星雲があり、望遠鏡や双眼鏡でも確認することができて天体観測ファンには大変人気です。猫の目のような形をした円形の星雲で、ぼんやりと淡い美しい色合いをしています。みずがめ座には他にも、星雲や星団、流星群などがいくつも観測され、星座の中にたくさんの星の密集地や銀河があるといわれているのです。

いつ頃見られるの?みずがめ座を探してみよう

そんなみずがめ座、見つけるための目印がいくつかありますのでご紹介しましょう。

みずがめ座は秋の星座といわれています。9月中旬から10月中旬頃であれば21時~23時頃に見えるので、みずがめ座観測にはもってこいです。方角は南の空、ただしみずがめ座の中には目印になる1等星はありませんので、探すには根気が必要かもしれません。

みずがめ座の中にある「三ツ矢」が見つかればしめたものです。これはみずがめ座の瓶の部分を構成する4つの恒星から成る、三ツ矢サイダーのマークのようなYの字に並んだ星々のこと。このY字星から、翼のように左右に広がっているのがみずがめ座です。あまり明るい星ではないので、星がよく見える場所で観測するとよいでしょう。

もうひとつ目印になるのが、みずがめ座の南側にある星座・みなみのうお座です。この星座にはフォーマルハウトという名前のとても明るい1等星があります。フォーマルハウトを見つけて視線を上に移していけば、そこにみずがめ座が広がっているはずです。

実際に秋の星空を見上げてみても、残念ながら「みずがめ座だ!」と実感することはなかなかできません。古代の人々は、特に際立って明るい星のない場所に、どのようにして水瓶を持つ少年の姿を見出したのでしょうか。

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