日本の歴史

お正月には縁起物を~おめでたい食べ物の意味や由来を一挙解説!

お正月ならではの食べ物はたくさんありますが、それぞれどんな意味や由来があるかご存知ですか?例えばおせち料理、あのお重の中に入っている料理や食材には、よい年を迎えられるようにという様々な思いが込められているのです。今回はそんなお正月料理の中から、縁起がよいとされる食べ物をご紹介します。

めでたさをお重に重ねて~おせち料理に登場する食材の数々

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おせち(御節)料理とは、お正月に食べるお祝いの料理のことです。

古くは、お節句に神様に御供えし、みんなでいただいていた料理のことを「御節供(おせちく)」と呼んでいました。もともとはお正月に限ったことではありませんでしたが、時代と共に変化し、一年でいちばん最初に訪れる節句でもあるお正月の料理のことを「おせち料理」と呼ぶようになったようです。

料理の内容も、その土地土地で採れた作物が中心でしたが、徐々に豪華な食材も使われるようになり、現在のおせち料理の形ができていきました。

おせち料理にはどんな縁起物が入っているのでしょうか。由来や意味などについて見ていきましょう。

子宝・子孫繁栄を願っていただく縁起物~数の子

おせち料理といって、数の子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。輝くような鮮やかな黄色は、おめでたい料理には欠かせない存在です。数の子が入ると、お重の中がぱっと華やぎます。

数の子とは、ニシンの卵です。

昔はニシンのことを「カドイワシ」または「カド」と呼んでいたそうで、「カドの子」が転じて「数の子」と呼ばれるようになったと言われています。人から人へ口伝えで伝授されていった物事ではよくあることで、ちょっと訛ったり言いやすいように言い換えたりして「数の子」になったのでしょう。

ニシンの卵は粒が非常に小さく、びっしりと密集して一塊になっています。「子孫繁栄」を連想させ縁起がよいとされ、おめでたい席で食べられるようになりました。また、ニシンという名前を「二親」になぞらえ、子宝や家族の繁栄を願っておせち料理に使われるようになったとも言われています。

健康を願ってマメに働きマメに暮らす~黒豆

数の子と並んでおせち料理に欠かせないものといえば、やはり黒豆でしょう。

黒豆は特に栄養が豊富で、昔から単なる食べ物としてだけでなく、薬としての効果を期待して食されていました。老化抑制のポリフェノール・イソフラボンをはじめ、ビタミン、ミネラル、レシチン、オリゴ糖など、不足しがちな栄養を補うことができる食材なのです。栄養素の分析技術などない時代の人々も、経験から黒豆が体によいと知っていたのでしょう。

そんな黒豆には「健康」「厄除け」「長寿」の願いが込められています。

また「まめ」という言葉には、「勤勉に・誠実に・億劫がらずに」といった意味がありますので、よく働き真面目に生きようという思いもあるのかもしれません。

さらに黒色は、魔除け・悪気を払うといわれていました。黒く艶やかな黒豆は、健康や長寿を呼び寄せ厄を遠ざける、お正月にはもってこいの食材なのです。

五穀豊穣を願ってカタクチイワシを~田作り

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数の子、黒豆と並んで「三つ肴」「祝い肴三種」などと呼ばれるものが田作り(たづくり、たつくり)です。「ごまめ」と呼ぶこともあります。

日常の食卓の献立では見かけることの少ない田作り、どんな料理かというと、見た目は小さな小さな干した魚を甘辛く炒り煮した、佃煮のようなものです。魚は主にカタクチイワシの干物が使われます。カタクチイワシを素干した乾物のことを田作りと呼ぶこともあるようです。

しかしなぜ、イワシを使った料理に「田作り」などという名前が付いたのでしょうか。

名前の由来は、そのものズバリ「田んぼを耕すこと・耕す人」のことです。昔は、田んぼの肥料としてイワシが使われていたことがあったため、このような名前が付きました。数ある肥料の中でもイワシは大変高級で、豊作の象徴と考えられていたようです。五穀豊穣・豊作を祈願して、お正月に田作りを食べるようになったと考えられています。

栄養豊富でよろこんぶ~昆布巻き・昆布

お祝い料理の中には、縁起よく語呂あわせで選ばれるものも多々あります。おせち料理の定番、昆布巻きもそのひとつです。
「よろこぶ」→「よろこんぶ」→「養老昆布」という具合に、名前からして縁起がよいとされる昆布は、おせち料理をはじめ多くのお祝い事に用いられています。そんな昆布を使った料理が昆布巻きです。

ただし単なる語呂合わせだけではありません。昆布は非常に栄養価が高く、また昆布自身も非常に繁殖力が高い植物であるため、子孫繁栄・不老長寿を願う食材と考えられているのです。

一般的には、魚を昆布で巻物のように巻き、かんぴょうで結んで食べやすい大きさに切ったものを使います。これを甘辛く煮て味を含ませたものが昆布巻きです。一口食べれば昆布の旨味と甘みが口いっぱいに広がります。

中身の魚はニシンを使うことが多いです。数の子のところでも少し触れましたが、ニシン自体も非常に縁起のよい名前を持つ魚といわれているので理にかなっています。さらに、お正月の準備をする年末に手に入りやすく、旬を迎えて美味しいからという理由もあるかもしれません。

甘くてフワフワだけどイカツイ名前~伊達巻

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年末になると、スーパーやコンビニの店先に並ぶもののひとつに「伊達巻(だてまき)」があります。巻き簾(まきす)で巻いて形を整えてある、甘い味付けの卵焼きのような食べ物です。

地域によって作り方に違いがあるかと思いますが、基本的には、白身魚やエビのすり身と溶き卵を混ぜ合わせたものが主な原料となります。これを甘く味付け、卵焼き用の鍋やフライパンに流しいれて、外はこんがり、中はふんわりとなるよう焼き、熱いうちに巻き簾で巻いて冷ませば完成です。こうすることで表面に巻き簾の筋が入り、縁がでこぼこした形に仕上ります。きんとんや煮豆など甘いものが苦手でも伊達巻は好き、という人も多いのではないでしょうか。

ところで、なぜ「伊達巻」というのでしょう。実は名前の由来には諸説あって、確かなことはわからないのだそうです。

伊達政宗が好んで食べていたという説もありますし、すり身などが入っていて卵焼きより豪華で洒落ているので「伊達」という単語を付けたといわれることもあります。また、女性用の幅の細い帯・伊達巻ににているところからその名が付いたという説もあるようです。

ごぼう・レンコン・さといも~なぜおせちに選ばれる?

縁起がよいということで、おせち料理やお正月のお祝い膳に使われる野菜もたくさんあります。その代表格がごぼう、レンコン、さといもです。いずれも冬場によく出回り味も美味しくなるため、お正月料理には欠かせない存在となっています。

ごぼう(牛蒡)は地面の中で細く長くまっすぐ根をはるところから、古来より縁起のよい食材とされてきました。最近のおせちでも、筑前煮やきんぴらごぼう、たたきごぼうなどの料理に用いられ、晴れの日のお膳を彩ります。

お正月料理に関わらず、レンコン(蓮根)は縁起のよい野菜です。穴があいていて向こう側がよく見えるので「見通しがよい」といわれていますし、蓮の花は極楽浄土に咲く花とされているため、いろいろな意味でおめでたい席に最適な食材と考えられます。

季節柄手に入りやすいさといも(里芋)も、おせちの定番素材です。特に「八頭(やつがしら)」と呼ばれるゴツゴツとした大きなさといもは、お正月料理に好まれる食材となっています。年末になると野菜売り場でよく見かけますね。

八頭は種芋の外側にくっつくように子芋、孫芋ができて大きく塊状になっていくため、八つの頭という書き方をします。子孫繁栄・末広がりの「八」など、おめでたい要素がたくさん詰まっているのです。

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