体調悪化、突然の辞任
2007年8月ごろから安倍晋三首相の身に異変が起こります。胃と腸に痛みを感じ、食欲減退や激しい下痢といった症状がずっと続くようになったのです。診断は、潰瘍性大腸炎。
この「潰瘍性大腸炎」は現在は特定疾患、つまり難病として国から指定されている病気です。非常に激しい腹痛や血便をともなう下痢が症状の、原因不明の疾患。安倍晋三は現在もマイボトルにぬるま湯を入れて国会に持参しているとか。
2007年9月、唐突に安倍晋三は内閣総理大臣を辞職します。病気の悪化が理由でした。その後入院、退院後も自宅療養に入ります。とはいえ政権を放り投げたというそしりを受けざるをえませんでした。その後、内閣総理大臣は福田康夫、麻生太郎と変わりますが、ついに2009年に民主党に政権を譲り渡すことになるのです。
再び内閣総理大臣へ
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「黒歴史」と呼ぶ人も多い3年間の民主党政権時代は、東日本大震災や福島原発事故の対応で後手に回った3人の総理大臣と民主党への失望を募らせました。そこで人が求めたのがやはり、自民党による政治。白羽の矢が立ったのが安倍晋三でした。はたして安倍晋三は国民の期待に応えることができているのでしょうか?2020年6月現在まで続く安倍政権の姿に迫りましょう。
マスコミと市民の関係性の変化
前回の安倍政権が発足したのが2006年。第二次安倍内閣は2012年にスタートしました。この間に何が起こったかと言うとそう、SNSや掲示板、双方向伝達のウェブメディアの発展です。
若者世代はインターネットを活用して、マスコミの思想傾向や参照情報元、ニュースの執筆者を分析するようになります。簡単にマスコミの情報を信じなくなったのです。マスメディアからしたら可愛くない存在ですね。ともあれマスコミは安倍晋三を「ネトウヨ」「胃腸が弱い」などと叩きました。これにデジタルネイティブ世代は違和感を覚え、一部の国民のマスコミ離れが進んでいきます。
友人に便宜を図った、森友・加計学園問題、桜を見る会問題など、安倍内閣にも不祥事は続いて発覚しているのはれっきとした事実。これらがどれも政権にとって致命傷にならない理由は、民主党政権のトラウマが日本人に残っているからかもしれません。が一方で、マスコミと日本国民の距離がいびつであることも理由の1つでしょう。国民は安倍総理を「ベスト」ではないものの「ベター」と判断しているのが現在の本当のところかもしれません。
改憲、国際関係……激動する外交
戦後レジームからの脱却を目指す、安倍晋三政権の悲願が憲法9条をはじめとした日本国憲法4項目の改憲です。これについては激しい議論がなされています。いまだ改憲の実施には至っていないものの、この10年あまり、日本の国際政治は激動を迎えていました。
まず、金正日総書記の死去にともない北朝鮮のトップに立った、金正恩によるミサイル恫喝(どうかつ)外交。中国や韓国による領土・領海侵犯問題。不可逆的な解決を誓約した国際条約を破った韓国への対応。世界的な「自国ファースト」の動き。
2016年に当選したドナルド・トランプ大統領とのパートナーシップを強めてアメリカとの結びつきを深くする安倍晋三。一方で、ビジネスマンでありお金にならないことはしないトランプ政権のアメリカは頼れないと判断しているのかもしれません。自民党の掲げる改憲案には、自衛隊の明記や非常事態宣言規定などが盛りこまれた「改憲4項目」があります。国民の納得を得られる日はいつ来るのでしょうか。
アベノミクスって結局どうだったの?
さて日本人のみならず世界が期待したアベノミクス。結局あれってどうだったのでしょう?2006年第一次安倍内閣の時点ですでに構想されていたこの経済政策は、2012年の第二次安倍内閣で本格始動。平成期に止まることなく進行したデフレを克服するのための金融緩和や銀行法の改正、成長戦略が行われました。国内のみならず国際社会にも、強い日本をアピールしていきます。
マイナス金利の導入や2019年10月に開始した消費税率10%の引き上げ。これらはかなり思いきった政策でした。実際に賃金は過去20年で最高になっており、株価市場も以前より好調です。が、実際の景況感、つまり「なんか景気がいい気がする」気分は日本人の生活に反映されていません。
さらには2020年春から本格化したコロナ禍の到来で世界経済が大転換期を迎えてしまいました。安倍政権は急きょ、国民全員に10万円の給付をするという世界的に異例の決断を下します。混乱が連鎖するコロナ禍へどのように対処するのか……。辞任説もささやかれる中、2020年6月現在、安倍晋三は日本一長く内閣総理大臣を務める人物として、歴史の記録を更新し続けています。
安倍晋三、本気で美しい国を目指して
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安倍晋三の主張や政策、景気対策は正しいのでしょうか?少なくとも、機能不全におちいってしまった民主党政権以前の自民党政権時代よりも、ずっとマシなのは確かです。昭和期のような高度経済成長を望めなくなった今、平成そして令和と日本はどうなるのでしょうか。安倍晋三が本気で目指す「美しい国」のビジョンは実現していくのか、これからも注目が必要です。