アメリカの歴史独立後

5分でわかるアメリカ作家メルヴィルー魅力と生涯、「白鯨」以外の代表作を解説

「書記バートルビー」(代書人バートルビー)

言われたこと以外やらない、てこでも自発的に動かない。どこの会社や仕事場にもそんな社員、1人はいませんか?激務で忙しいアメリカの金融街、ウォール街にもいました。彼の名前はバートルビー、書記です。

個性派メンバーで固められた法律事務所。午前と午後で仕事にムラがある他の職員をカバーすべく雇われたバートルビー青年。彼は与えられた仕事はこなすものの自発的に何かをすることがありません。ぶっ飛ばしたくなるほど、自分から何もしない!そんな彼はある時から、事務所に居座りはじめるのです。語り手の弁護士が行った選択は……。

現代の新入社員や「働かないおじさん」などの問題にもつながっていく、バートルビーの姿。彼の「しない方がいいと思います」というセリフが印象的です。無気力なように見えるバートルビーには自我や希望があるのか、ないのか。そしてなぜこうなってしまったのでしょうか?読めば読むほどに謎と魅力が深まる名作です。

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書記バートルビー/漂流船 (光文社古典新訳文庫) eBook: メルヴィル, 牧野 有通: 本

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「べニート・セレーノ」(漂流船)

個人的に猛プッシュしたい名作があります。「べニート・セレーノ(漂流船)」です。ある日、航海をしていたアメイサ・デラーノ船長の目の前に異様な漂流船があらわれます。漂流船の船長はベニート・セレーノ氏。暴風や疫病で多くの命が失われたというのです。

90日間の苦難に耐えた漂流船。ベニート船長に忠実に従い、いたわる黒人の従僕バボウ。デラーノ船長は2人のうるわしい主従愛をながめながら、不穏な気配を感じとるのです……。

作中の時代は奴隷貿易盛んなりし18世紀末。「義務づけられた」黒人差別や偏った証言、語り手のクセのあるものの見方により疑問が深まり、誰が真実を言っているかわかりません。最初から最後までハラハラドキドキが止まらない、サスペンス仕立ての芸術作品です。

「ビリー・バッド」

「白鯨」と並ぶメルヴィルの傑作があります。最晩年、亡くなる直前に完成させた長編「ビリー・バッド」は無垢な水兵の命が左右されるハラハラの心理ドラマです。

美しい容姿と純粋でうぶな心を持った船員ビリー・バッドは、ある日水兵として軍艦に徴用されます。軍艦で素直に働くビリーでしたが、生まれてはじめての「悪意」に遭遇するのです。追いつめられたビリーが犯してしまった罪は、はたして判決に値するものだったのか……そこにはどんな心理が働いていたのでしょうか。

自身の船員として、水兵としての経験を活かし、水夫の人権問題や超法規的な処置のとられる船上の様子を問題提起してもいます。「白鯨」よりも簡単で単純な筋書きですが、人物がどんな選択をするのか最後まで目を離せないサスペンス仕立てのドラマです。「白鯨」と並び、メルヴィルの傑作として広く親しまれています。

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見たことない海と人の姿を描いたメルヴィル

image by iStockphoto

「白鯨」、1回手をつけたけどつまらなくて難しくて、読むのやめたんだよね。大変そうだから読んでないんだ。そんなあなたも短編や中編から入ってみては?おすすめは「書記バートルビー」→「ベニート・セレーノ」→「ビリー・バッド」→「白鯨」の順番で読むことです。読まないなんてもったいない。アメリカの誇る大作家の描く海と人の世界をぜひ堪能してください。

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