フランスヨーロッパの歴史

近代細菌学の父といわれる「ルイ・パスツール」の功績とは?教訓は?わかりやすく解説

現実にはワクチンが出来ても一時しのぎの場合が多い

ワクチンの開発に成功しても弱毒にしたワクチン効果によって抗体が存続できる期間も半年、1年以内と限られるケースが多く、生涯抗体効果が期待できる例は非常に少ないのです。それだけに、世界の生化学者や細菌学者の皆さんは、パスツールのお陰で常に開発を余儀なくされています(笑)。

いずれにしても、まだその正体がわかっていない今回の新型コロナウイルスの恐ろしさが思い知らされているのです。

しかも、現代の人類は、さまざまなウイルス、細菌と遭遇しているにも関わらず、それを教訓に対策をとっているとは言い難い状況にあります。これは非常に危険なことと言わざるを得ません。いくら、軍事力で国を守ろうとしても、それよりも悲惨なパンデミックで国が滅んでしまうことも可能性としては高いといえます。

ルイ・パスツールの生涯

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ルイ・パスツールは、もともと化学者として酒石酸などの研究で認められていました。しかし、1857年過ぎにワインの腐敗原因についての調査依頼があり、その究明をきっかけに微生物学やその殺菌方法の世界に足を踏み入れ、その道で名をなしたのです。彼の研究分野は広範な範囲に及び、科学、生化学、医学、医療分野関係などを研究していました。

中でも、弱毒化した微生物を接種することで人間は免疫を得られるということを発見し、ワクチンによる予防接種という疫病に対する予防理論を確立したことはとくに有名です。多くの伝染病、感染症に苦しむ人々を救ったといえます。彼自身も狂犬病の病原体がウイルスであることを発見し、そのワクチンを開発しました。

このような功績もあり、フランスではパスツール研究所も設けられており、フランスの人々はもちろん世界の人々の尊敬を受けているのです。日本でも北里研究所で有名な北里柴三郎氏や野口英世氏などにも大きな影響を与えています。

ルイ・パスツールの発明したワクチン予防接種による疫病対策

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20世紀以降にスペイン風邪を始め、多くの疫病が人類を襲っています。それらに対してパスツールの研究成果・発見を活かしたワクチンの実験・開発がおこなわれるようになったのです。私たちも、子供の頃から天然痘、BCG、三種混合ワクチン、インフルエンザ、ツベルクリン、百日咳など多くのワクチン接種をしてきたことを覚えている方も多いのではないでしょうか。その他にも、コレラ、破傷風などの風土病に対するワクチンもたくさん開発されています。

そのお陰で私たちは多くの疾病や病気から守られているのです。今回の新型コロナウイルスのパンデミックでも、BCB(結核ワクチン)を受け続けているアジアなどの国の重症化による死亡率は低くなっているといわれています。BCGの予防接種をしていない欧米各国に対してけた外れに低くなっているのです。

パスツールと新型コロナウイルスによる現代のパンデミック

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しかし、パスツールが発見したワクチンによる疫病対策は、人類が完全にウイルスなどの微生物に対してすべて勝利したわけではありません。むしろ、ワクチンを開発できなかった例も多いのです。エイズウイルス、エボラ出血熱などは発生からかなりの時間が経っているにも関わらず、未だにワクチンの開発はできておらず、アフリカなどでは現在も猛威を振るっています。

ここでは、パスツールの発見したワクチンと現在パンデミックを引き起こしている新型コロナウイルスの関係について見てみることにしましょう。

新型コロナウイルスのアジアの死亡率が低い要因は?

人口10万人当たりの新型コロナウイルスの死亡率は、東南アジアから東アジアでは欧米に比べて極めて低くなっています。欧米では10万人当たりの死者は数百人ですが、東アジアや東南アジアでは10人未満になっているのです。日本が少ないといっても韓国や中国ではもっと少なく、政策的に押さえ込めたとは言えません

イギリスでは、黒人やアジア系住民の新型コロナウイルスにかかってからの死亡率が高いという報告がされています。しかし、アジア人、黒人の国の新型コロナウイルスによる死亡者は極めて低くなっており、矛盾した報告になっているのです。しかしこの矛盾は、イギリスにおける低所得層がアフリカ系黒人やアジア系住民が多いため治療が受けられないでいることが要因と考えられます。充分な医療措置が受けられないことから重症化した人の死亡率が高くなっているだけで、人種とは関係ないと考えられるのです。

いずれにしても、アジア人の死亡率が低い原因はその理由を充分に追求する必要があります。もし、重症化や死亡率が本当に低いのであれば、風邪と同じで特別自宅待機措置をとる必要はないのかもしれないのです。

ワクチンが出来ても新型コロナウイルスは何度も襲ってくるだろう

21世紀になって流行したSARSは自然と消えていきました。したがって、新型コロナウイルスも同様に消えてなくなる可能性もないとは言えません。しかし、自然と消えてなくなっているコロナウイルスは稀(まれ)であり、たいていは一時的に弱まってもいずれどこかで再流行します。あるいは風邪ウイルスのように、人類と共生するようになるかもしれません。したがって、今後現在の新型コロナウイルスの流行がワクチンなどで抑えられたとしても、抗体の有効期限に限界がある可能性が高く、何度も襲ってくる可能性はあるのです。また、突然変異によって開発されたワクチンが効かなくなる可能性もあります。

地球の地中深くにはほかにもさまざまなウイルスが存在しており、それらがいつまた襲ってくるかもしれません。地球の生物を絶滅させるのは何も巨大隕石の衝突に限られないのです。

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