古墳時代日本の歴史

尋常じゃない数!これはいったい何の穴?「吉見百穴」について歴史系ライターが解説

お気に入りの埴輪や勾玉を作ってみよう!【吉見町埋蔵文化財センター】

吉見百穴から歩いてすぐのところに「吉見町埋蔵文化財センター」があります。吉見百穴への入場料は大人300円ですが、埋蔵文化財センターは無料となっていますね。

ここには吉見百穴や付近の古墳などから出土した土器や石器、埴輪などが展示されていて、当時の農機具や編み物なども復元されています。事前にここに立ち寄ってから、実際に吉見百穴を見学してみた方がわかりやすいかも知れませんね。

また体験学習コーナーもあり、古代人のアクセサリー【勾玉】や古墳時代を象徴する【踊る埴輪】を自作することもできますよ。埴輪の場合、乾燥後の焼き上げに時間が掛かるため、製作から1ヶ月ほど掛かります。

エメラルド色に光る幻想的な苔【ヒカリゴケ】

吉見百穴の横穴墓内にはヒカリゴケという原始的な苔が自生しています。自ら発光しているわけではなく、穴の中に入ってくるわずかな光をレンズ状細胞が受け止め、それを反射させるため光っているように見えるのですね。また細胞内には葉緑素が多く含まれていますから、光がエメラルド色に見えるのです。

ヒカリゴケの生育には一定の温度と湿度を保つだけの環境が必要とされていますね。それゆえ中部地方以北の高地にしか自生しないとされていますが、こういった関東地方の平野部で生育している自体、植物学上では非常に珍しいことだそうです。

地下軍需工場となった吉見百穴

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太平洋戦争末期、吉見百穴がある岩山に航空機部品を作るための軍需工場が建設されました。岩山の最下部に直径3メートルほどのトンネルが碁盤の目のように掘られ、この際に横穴墓も数十個潰されてしまったといいます。

当時、アメリカ軍の大規模な空襲に晒されたおかげで、日本の航空機生産能力は壊滅的な打撃を受けました。現在のさいたま市にあった中島飛行機も掘りやすい地質に注目して、ここに工場を移転させたのでした。

しかし凝灰岩質で掘りやすいと考えられたものの、実際に掘り進めてみると硬い岩盤にぶつかり、難工事を極めたそうです。そのため落盤事故が頻発し、多くの工事従事者が亡くなられたそうですね。

ちなみに2019年10月現在、軍需工場内跡地の点検と調査のため立ち入りができません。立ち入り禁止が解除になってから訪問してみて下さいね。詳しくは吉見町公式ウェブサイトでご確認ください。

吉見百穴だけじゃもったいない!周辺観光スポットもご案内

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吉見百穴は国史跡に指定されていて、それなりに見どころもあるのですが、穴を眺めるだけではもったいないですよね。周辺の観光スポットも合わせてご紹介していきましょう。

名将たちの争奪戦の舞台となった城【松山城】

「松山城」と名の付く城跡は全国にはたくさんあって、この埼玉県の松山城もその一つ。区別するために「武蔵松山城」とも呼ばれていますね。現在は道路で分断されていますが吉見百穴と同じ比企丘陵に位置しています。

戦国時代には関東管領同士の争いに巻き込まれたり、北条・上杉・武田など名だたる戦国大名たちの争奪戦の舞台となりました。豊臣秀吉が来攻してきた小田原合戦の際には大軍に囲まれて落城の憂き目に遭っていますね。

城の南・西を市野川が流れていて、これを天然の要害としており、現在でも曲輪跡や空堀、土塁などが明瞭に残っています。特に空堀は「これでもか!」というほどたくさん掘られていて、小田原北条氏らしい縄張りの様子が楽しめますね。

ハイキングやウォーキングに最適【八丁湖公園とポンポン山】

「八丁湖」は比企丘陵の麓に数多く残っている昔の農業用人工池の一つです。少し前まではレストハウスやボートなども営業していたそうですが、現在はジョギングやウォーキングのメッカになっています。湖を一周する約2キロのコースはアップダウンなどの起伏もあって人気がありますね。

また隣接するように「黒岩横穴墓群」もあって、これは吉見百穴と同時代のものだそうです。一説には吉見百穴よりはるかに多い500基もの横穴墓があるといわれていて、思わず古代ロマンを掻き立てられてしまうかも。

そして片道1時間ほどの場所にあるのが「ポンポン山」。この山に登って足を踏み鳴らすと「ポンポン」と小気味よい音がするそうで。実はこの山にはこんな言い伝えがあるのです。

 

昔、ある長者が高負彦神社に参拝し、「財宝を誰にも盗まれないよう隠したい」とお願いをしました。すると「この岩山に埋めるように。私が守ってやろう」という神のお告げを頂いたそうです。喜んだ長者は言われた通り財宝を岩山に埋めました。

ある時、盗人がやって来て隠した財宝を奪おうとしたそうです。すると突然、「ポンポン!」と山鳴りがしたため、盗人は恐れおののいて逃げ帰ったそう。それ以降、誰も財宝を盗みに行こうとする者はいなかったとのこと。

 

そんなポンポン山も現在は子供でも登れるハイキングコースになっていて、なかなか雰囲気の良いスポットです。

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明石則実