大正日本の歴史

日本を代表する作家「芥川龍之介」の生涯と名作の数々をわかりやすく解説

生きるとは・正義とは何か『羅生門』

『羅生門』(らしょうもん)は、1915年(大正4年)、芥川龍之介がまだ学生だった頃に雑誌「帝国文学」に寄稿した小説です。

『今昔物語集』の「羅城門登上層見死人盗人語第十八」を題材にしたもので、人間のエゴイズムを巧みな表現で描き出した秀作と言われています。

時は平安時代。天災や飢饉が続いて荒廃しきっていた都が物語の舞台です。

仕事を失い途方に暮れていた男が、いっそ盗賊にでもなろうか、いやそんなことはできない、などと考えながら、羅生門という門の下で雨宿りをしていました。

ふと、門の楼閣の上に人の気配を感じ、登ってみるとそこに女の死体から髪を抜く老婆が。死人になんてことをするんだ!と男は怒鳴ります。老婆は、抜いた髪を売ろうとしていたのです。生きるとはどういうことか、悪とは何か……。男と老婆の間で会話が繰り返されます。

生きるために仕方のないこと。

正義感から、老婆の行いに憤りを感じていた男でしたが、老婆との会話をするうちに、心の中にある感情が生まれます。それは「勇気」。男は老婆から力づくで着物をはぎ取ります。「こうしなければ俺も餓死する」と言い残して、闇夜の中へ消えていくのでした。

心にズシンと響く短編小説が魅力・芥川龍之介作品の世界

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『蜘蛛の糸』などは国語の教科書で扱われることも多く、子供のころから親しんでいたつもりでいましたが、改めてその生涯を見てみると、繊細でデリケートな心の持ち主だったのかもしれないと深く考えさせられました。時代を超えて読み継がれる芥川作品。広く読まれているものは前期の作品が多いようですが、これを機会に後期の作品も読んでみたいと思います。

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