日本の歴史昭和

無謀な作戦だった「インパール作戦」とは?現代でも見られるこの作戦で心がける事とは

企業経営における現代のインパール作戦

現代においてインパール作戦が発生しやすいのは、何といっても企業でしょう。企業は大日本帝国の陸軍と同様、組織で成り立っているものであり、懲罰規定があり、会社や上司の命令に逆らうことは解雇、すなわち経済的な死をもたらします。企業における現代のインパール作戦の典型的なものは、無理な経営の拡大路線や過剰投資です。経営基盤に釣り合うことのない拡大路線をとる経営戦略に対してメインバンクがいくら反対したところで聞く耳をもつどころかメインバンクとの取引を切り捨て、転換社債で資金集めをした企業がかつてありました。

その企業のトップはつねに、拡大路線の先の企業の栄光を社員に訴え続けていたのです。ブルー・オーシャン市場にその企業が出店することで、資金が潤沢に回り出し、一発逆転が狙える夢を掲げる中で、現実には企業の業績が悪化する一方でした。その状況をトップは祈りと社員たちへの鼓舞で乗り切ろうとしていたのです。ついにはメインバンクが警告を発するようになりましたが、それすらも耳に入れることはありませんでした。結果として資金繰りを転換社債に頼ることになり、その償還期に資金ショートを起こしてその企業は倒産したのです。

受注案件の短納期における現代のインパール作戦

案件を受注して納品する企業において、営業同士の絡みで制作現場では、絶対に達成不可能な納期を言い渡されることがあります。しかも正式に契約を交わした後であることが多く、達成不可能なことを現場の管理職が訴えても全く取り合ってもらえないことが多いです。こうした場合、大抵はこの案件を受注すれば、口座を開くことができる、継続的な案件が発生するなどで、窮地からの一発逆転を狙えるといった話がついてきます。

そして案件をとった営業トップにおいては、納期は死守した上で納品できることを祈っているもの。現場だけでなく、別案件の担当者から忠告を受けたとしてもそれを曲げることはできないでしょう。そんな状況に陥った場合、大抵は人海戦術が取られ、不慣れな外注の大量投入や、不休不眠で納期を守らせるなどの行動がみられがちです。結果として納期遅れだけでなく、品質低下にもつながります。

現状がインパール作戦であるかを見抜く方法とは

今現在の自分が置かれている環境が、現代のインパール作戦であるかどうかを見抜くには、インパール作戦の3つの特徴を帯びているかどうかを知ることです。すなわち「根拠のない一発逆転の発想に基づいている」「論理的に推し進めるのではなく、事態の好転を祈る傾向にある」「どれほど現実を突きつけられても強行突破される」といったことが起きているかどうかを確認しましょう。そしてその特徴とともに意思決定側が、「リスクなき冒険への熱情」に満ちあふれているかどうかです。

例えば、企業のオーナーが意思決定者である場合、無理難題とされる作戦が失敗しようとも、オーナー自身は他にも企業を所有しており、さほどの痛手ではない場合、リスクがない立場にあるといえるでしょう。そしてオーナーの作戦が全て遂行されて一発逆転劇を望んでいる場合には、まさにそこには「リスクなき冒険への熱情」があるわけです。

現代のインパール作戦から脱出するときの心構え

image by PIXTA / 19882835

自分の置かれている環境がインパール作戦であることがわかった場合は、そこから脱出するしかありません。しかし闇雲に脱出を試みては、周囲との摩擦や、かえって自分が作戦の中枢に閉じ込められてしまう危険もありますので、それ相応の心構えが必要です。まず最初に行うのは情報収集と言えるでしょう。現代のインパール作戦とは「巻き込まれたら間違いなく自分自身が被害に遭遇する結果につながる作戦」です。餓死や戦病とは形態が異なりますが、メンタル的なダメージや場合によっては過労死にも繋がりかねません。そのため事前に情報収集を行い、脱出するためのルートを確保すべきです。

次に行うこととして、必ず第三者に相談しましょう。ただしここでいう第三者というのは、自分と同じチームの人間や、同じ会社の人間ではなく、あくまでも現代のインパール作戦とは全く無縁の人たちです。相談する理由は、脱出しようとするのは自分の意思の弱さなどではなく、自分自身が巻き込まれている作戦自体が客観的に問題あるものとして再認識するため。そして最後に脱出するわけですが、その場合には体裁よりも実益を取る意識を持ちましょう。体裁とは、作戦が執り行われている組織を前提とした自分の姿です。この姿を全否定するくらいの覚悟がなければ脱出はできません。

現代にも存在するインパール作戦に対しては脱出しか方法がない

image by PIXTA / 47381120

インパール作戦は根底に意思決定側のリスクなき冒険への情熱があるため、何人も覆すことができないものです。この作戦に巻き込まれた場合には、思い切って脱出するしかありません。しかしそのためには作戦遂行中の組織内の自分の存在を全否定する勇気が必要でしょう。

1 2
Share: