小説・童話あらすじ

隠された意味とは……本当は怖くて切なくて悲しい「日本のわらべ歌」

子供たちが縄跳びや手まりなどをしながら歌う「わらべ歌」。誰もが知っている慣れ親しんだ歌が多いですが、よくよく聞いてみるとマイナーコード(短三和音・暗く悲しげな印象を受ける音階)のものが多いんです。子供たちが歌う歌のはずなのに、なぜ暗い曲調のものが多いのでしょう。わらべ歌の歌詞の内容をよくよく観察してみると、その理由の一端が見えてきます。今回は隠された意味を持つわらべ歌をいくつかご紹介します。

意味深な歌詞も多い・古くから伝わるわらべ歌に隠された意味とは

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わらべうた(童歌)とは、古くから歌い継がれてきた、子供たちが遊びながら歌うための歌。いつ頃、どのようにして作られたかはっきりとわかっていないものも多く、人から人へ、口伝えで伝わってきたものが中心です。手まりや手遊び、数え歌、絵描き歌など遊ぶときに歌うものや、子守歌として子供たちに聞かせるものなど、様々なわらべ歌が今も数多く歌い継がれています。その中から、よくよく読むと不思議な歌詞を持つわらべ歌をいくつか集めてみました。

かごめとはいったい何?「かごめかごめ」

子供のころ、だれしも必ず歌ったことがあるのではないかと思われるほど有名なわらべ歌「かごめかごめ」

子供たちが輪になって手をつなぎ、その輪の中心に子供がひとり(鬼の役)、しゃがんで目を閉じます。輪になった子供たちがゆっくりと回りながらこの歌を歌い、歌が終わったところで足を止め、中心にいる子が目を閉じたまま真後ろに立っている子が誰か言い当てる……。そんな遊びとともに伝わった歌です。

もともとは、人から人へ歌い継がれてきたもので、自然に発生した童謡とみられており、どこが発祥か詳しいことはわかっていません。各地域で歌詞が微妙に異なっていましたが、現在では、昭和初期に千葉県野田市の歌詞が全国に伝わったことをうけて、千葉県野田市がかごめかごめの発祥地と言われています。

肝心の歌の意味についても、様々な解釈があるようです。長い間歌い継がれるうちに追加されていった可能性も考えられていて、現代では解釈が難しい古い言葉が使われている、または、ただリズムをとるためのもので特に深い意味はない、との見方も。

かごめは「籠目」であり、竹などで編まれたかごの編み目のことである、という解釈や、「囲め(周りを囲む)」「屈め(鬼がいるから身をかがめて隠れろ)」という解釈、「神宮女(かぐめ)」という神事を行う巫女のような女性のこと、など、様々な説が伝わっています。

中には、その悲しげな曲調から連想するのか、かごめとは「籠女(かごを抱いているような女性・妊婦)」のことで、嫁が姑に背後から突き飛ばされ流産する様子を描いた歌ではないかという説も。

古い時代の、処刑場を取り囲むために作られた竹垣を表しているとの説もあります。

謎が謎を呼ぶ「かごめかごめ」。徳川埋蔵金のありかを歌った暗号ではないかという説まであるのだそうです。

以下に、いくつかパターンがある「かごめかごめ」の歌詞のうちのひとつを掲載します。

【かごめかごめ 歌詞】

かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 

夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?

行きはよいよい帰りは……「とおりゃんせ」

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意味深な歌詞と悲しげな曲調といえば「とおりゃんせ」というわらべ歌を思い浮かべる人も多いでしょう。

この歌も、誰がいつ作ったかはっきりとはわかっていません。江戸時代には成立したものとみられていますが、いくつかの説があり、詳細は不明です。

遊び方も独特。子供が二人向き合って両手をつないで高く上げ、ゲートの役割を担います。ほかの子供たちはその間を、この歌を歌いながら通過。歌の終わりで、ゲート役の子供があげていた手を勢いよく下ろし、ちょうどそのとき下をくぐろうとした子を捕獲。捕まった子はゲート役の子と交代します。

これが、「とおりゃんせ」の一般的な遊び方です。

このわらべ歌の舞台となったとされる神社(お札を納めに行く神社)が関東圏にいくつかあります。

また、神社ではなく関所を表した歌だという説も。大人たちが関所の恐ろしさを話している様子を見て、子供たちがこんな歌を歌い始めたのではないか、との見方もあります。

さらには、神隠しを表しているという説や、何かの埋蔵金のありかを示した暗号ではないかとの説も。埋蔵金説、けっこう多いです。

【とおりゃんせの歌詞】

とおりゃんせ とおりゃんせ ここはどこの 細道じゃ 天神さまの 細道じゃ 

ちっととおして 下しゃんせ 御用のないもの とおしゃせぬ

この子の七つの お祝いに お札を納めに まいります 

行きはよいよい 帰りはこわい こわいながらも とおりゃんせ とおりゃんせ

まさか人買いの歌?「はないちもんめ」

意味深な歌詞といえば「はないちもんめ」を忘れてはなりません。これも、子供たちの遊び歌のひとつです。

かなり長めの歌ということもあり、地方によって歌詞の内容にはかなり違いがあります。

遊び方もやはり独特です。

子供たちが2組に分かれ、向かい合って一列に並んで手をつなぎます。歌を歌いながら、片方の列が4歩前に出るともう片方が4歩後ろに下がり、次に下がったほうの子供たちが4歩前に出てもう片方が4歩下がる……。これを繰り返し、歌を歌い終わった後、各組で集まって相談し、相手のチームの中からひとり、欲しいこの名前をそれぞれ挙げます。名前を言われた子は前に進み出てじゃんけん。負けたらその子は相手方に取られてしまうのです。

冷静に見ると、冷酷な遊びにも見えますが……。そもそも外に鬼がいるわけですから尋常ではありません。

ただ、「お釜」や「お布団」のくだりを身近な生活アイテムに言い換えて即興アドリブを楽しんだりする子供たちもいて、深く考えなければ、今も昔も楽しく遊べる遊び歌といえそうです。

では、歌詞の内容はどうでしょう。

いちもんめとは、一匁のこと。時代によって価値は様々ですが、いくらかの金銭のことを表しています。

つまり、人(おそらく若い女性)が一匁で売られていくという、人買いの様子を歌ったものではないか、との説が有力なのです。

もしかしたらこれも、大人たちが話している様子を見聞きして、その様子を子供たちが歌うようになった歌なのかもしれません。

「はないちもんめ」には、実にたくさんのバージョンが。以下にそのうちのひとつを掲載します。

【はないちもんめ 歌詞】

勝ってうれしいはないちもんめ 負けてくやしいはないちもんめ

となりのおばさんちょっと来ておくれ 鬼がいるから行かれない

お釜かぶってちょっと来ておくれ お釜は底抜け行かれない

お布団かぶってちょっと来ておくれ お布団ビリビリ行かれない

あの子がほしい あの子じゃわからん この子がほしい この子じゃわからん

相談しよう そうしよう

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