マルクス経済学における賃金
さて、労働者は自分の労働力という商品を資本家に売っていると解説しましたが労働者という商品は食べ物や飲み物みたいに使えば即座になくなるような消耗品ではなく、使えば使うほど価値を増やしてくれるというものだと考えられていました。このことを資本論では労働者商品の特殊性とされていますが、資本家たちはこの特殊性を使って資本を増やしていたのです。でもそうなると必ず払わなければいけないのが賃金。
資本主義社会というのは資本家たちに価値を売ってくれた労働者に対してずっとまともに働いてくれるために必要な賃金(いわゆる生活費)を資本家が払うという形式をとっていました。賃金はRPGにおける回復の薬みたいなものだということなんですね。
剰余価値と資本蓄積
企業の運営というのは必ず、資本や労働者に払っているお金よりも多くの利益を得なければなりません。そうしなかったら赤字運営で倒産まっしぐらですからね。その中でも商品を生み出すためには労働者の働きが必要不可欠。労働者が働くことによって商品が生産されて利益となるのですが、その中でも労働者の賃金以上の価値を出したもののことを剰余価値と言ったりとします。
『労働者が生み出した価値−労働者の賃金=剰余価値』
資本家たちはこの剰余価値を増やすことによって資本を増やして会社を成り立たせているのですが、この剰余価値で生み出された資本は貯めるだけではなく、また新たなる商品の生産のために使わなければなりません。
このことを資本蓄積と言ったりとするのですが、資本家たちは剰余価値を使って労働者を雇ったり原材料の調達をしたり(この資本を可変資本と言います)、工場や機械へと投資したり(この資本を不変資本と言います)して生産力の向上を目指していくのですが、この資本蓄積が労働者を苦しめる結果となります。
資本家と労働者の格差
さて、資本蓄積によって新しい生産力を生み出すと説明しましたが、資本家たちはこの資本蓄積を不変資本のみに突っ込んでいくことになるのです。
要するに企業や資本家たちは便利で人の力を借りなくてもいいような機械にばかり投資することによって労働者がいなくても会社が運営できるようになります。今では自動車を作っているのはクレーンなどの自動化された機械ですし、食品を作るために開発されたロボットもいろいろありますしね。
しかし、こんな状況となると労働者という身分はお荷物状態となってしまいます。資本家からしたら機械を導入するから賃金が必要な労働者をリストラして会社を効率的に運営したいと思っていますし、そうすることによってコストダウンすることが可能ですからね。
でも、そうなると労働者人口が多いにもかかわらず働き口がどんどん無くなっていき、最終的にはどんなに低賃金でも働かなくてはいけないような困窮とした生活が待っていました。
そのためいつしか資本家と労働者の生活の差が激しいものとなり、労働者の生活は苦しくなる一方とマルクスは結論付けたのです。
でもこの資本蓄積の話って今のAI技術の進歩に似てませんか?
たまにこのままいけば失業者が増えるというニュースをよく聞きますが、マルクスはこれを前々から察知していたのでしょうかね。
労働者の大規模化
資本蓄積によってどんどん不利な立場に立たされている労働者でしたが、マルクス曰く労働者はたくさんいる場所で一斉になる方が効率的になるとか。そりゃ、いろんな人と一緒にやれば競争意識が生まれてより多くのものを生産してくれますしね。
しかし、労働者が沢山いると競争意識の他に仲間意識が芽生えていきます。同じ労働者たちですから立場や境遇は一緒。そうなると労働者たちは団結して資本家たちに歯向かっていくようになります。それが今で言うところの労働組合なんですが、マルクスはさらに時が経つにつれてこの対立が激化するとしていました。
例えば、資本主義の社会でしたら一位と二位には雲泥の差があります。とある政治家が二位じゃダメなんですが?と言ったりしましたが、それが通用しない社会が資本主義なんです。
しかし、そんな資本主義の社会だと、必ず負けてしまう企業が出てしまい、そんな企業は潰れるか吸収合併されるのがほとんどでした。
ゲーム会社で言うのであればバンダイとナムコが合併してバンダイナムコに、スクエアとエニックスが合併してスクエアエニックスになったりしていますね。
でも、こんな状況になると資本家の数がどんどん減っていき、それに合わせて労働者の数がどんどん増えていきます。なぜなら企業の上に立つ資本家が居なくなっているからです。
そうなると一握りの資本家が沢山の富を持って、その一方で大勢の労働者たちが貧しい生活を強いられるようになります。
こんな矛盾した社会。労働者たちは黙ってはいません。こうしたひずみが元で起きるのが恐慌であったり、ロシア革命に代表されるプロレタリア革命でした。
マルクス主義の最大の欠点
マルクスが書いた資本論は共産主義の世界という理想郷を世界に知らしめ、のちの世界に大きな影響を与えました。
しかし、このマルクス主義にはとある根本的な欠点があったのです。最後はマルクス主義のその後と欠点について見ていきましょう。
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共産主義になる方法を全く書いていなかった
マルクス主義の最大の欠点はマルクスは共産主義という思想は提議したものの、それはあくまでも理想のみの形でした。そのためにこれから先共産主義を目指す革命家や国家はマルクス主義の欠点をどうにか対処しなければならず、その結果は大飢饉や大粛清へとつながっていくことになるのでした。