2000年の時を経て残るローマン・コンクリート
コロッセオは完成した後も、後の皇帝たちの命によってたびたび拡張工事が行われています。
現存するコロッセオは、残念ながら崩れている箇所も多く、原型をとどめているとは言えません。しかしそれでも、観客席4階部分までしっかり残っている部分もあり、2000年前の様子を思い描くには十分過ぎるほどです。
2000年以上この形を保っているとはまさに奇跡。建物全体がアーチ型になっていることなどから、物理学的にも力学的にも大変安定した構造になっているそうです。
使われているのはローマン・コンクリートと呼ばれるレンガ。もちろん、セメントや鉄骨の類は一切使われていません。石積みだけで造られた建造物。重機もコンピュータもない時代に、人力だけでこれだけの建物を築いた古代の人々の信念には頭が下がる思いです。
余談ではありますが、コロッセオに使われている石材は一部、他の建物に利用されていた可能性が示唆されています。中世以降に市内に建てられた建造物の中には、コロッセオの石を流用したものもいくつかあるのだそうです。長い歴史を持つ街なら当然のこと。しかしもし、石材の流用がなかったら、コロッセオはほぼ完全な状態で残っていたのかもしれません。
見どころ:じっくり巡りたい「コロッセオ観光のポイント」
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いつの季節に訪れても多くの観光客で賑わうローマ歴史地区。人が多いのでゲートは混みあいますが、コロッセオ自体が巨大なので、中に入るとそれほど混雑は感じません。間近で見るとその大きさに圧倒されること間違いなしのコロッセオの見どころをご紹介します。
アリーナを見渡して大きさを体感
ゲートの中に入ったら、アリーナを見下ろしながら、4階建ての観客席部分をぐるりと一周します。
どこから見下ろしてもとにかく広い。その大きさに改めて驚かされること間違いなしです。2000年前の建物ということは、そのころ日本はまだ弥生時代。日本の文化も自慢すべきものではありますが、こんなものを作ってしまった古代ローマ帝国とはどんな国だったのか、やはりいろいろ考えてしまいます。
見上げると空が広い。かつては日よけのための布製の天蓋が張られていたのだそうです。2000年前に東京ドームのような建物が既に存在していた、ということでしょうか。
しかもこれが、市民の生活のためのインフラ整備や都市計画の一部ではなく、娯楽施設だったというから驚きも倍増です。どれだけのお金が使われたのか考えると、市民の不満が余計に募ったのでは……。どのようにして建造されたのか、想像の域を出ませんが、この当時のローマには奴隷たちが大勢いましたので、ローマの人々には人件費という感覚が薄かったのかもしれません。
複雑な地下構造は要チェックポイント
アリーナ部分は、床がむき出しになっていて地下構造が見える状態になっています。建造当時は、アリーナ部分には板が張られていて、土が敷き詰められていたのだそうです。
現在では、その板は取り払われてなくなっており、地下構造が丸出しの状態になっています。
地下部分も、事前に申し込んでおけば降りて直に見学することが可能。地下はコロッセオの楽屋や控室、舞台装置を動かすための機械の設置場所などがあった場所で、コロッセオの魅力を知るためにはぜひ見学したいところです。
迷路のように石が張り巡らされた地下。ここで戦士たちは大歓声を聞きながら出番を待っていたのでしょう。
ここにも注目!巨大構造を支える柱は3様式
アリーナの広さに目を奪われがちですが、観客席の通路に建つ無数の柱にも注目したいところです。
建物を支える柱の上部分を見てみると、まったく装飾がないもの、簡単な台座の上に建っているもの、上が少し細くなっているもの、上部分にちょっとした装飾があるもの、彫刻が施されたものなど、場所によって建築様式の違いが。全体的に、1階部分は装飾が控えめで、上の階に行くほど彫刻が施され洗練されたデザインになっています。
いずれも石の材質は同じものと思われるため、それほど大きな違いは感じません。しかしよく観察すると、1階ではドリス様式、2階にはイオニア様式、3階はコリント様式、4階部分はアーチのないコリント様式という、異なる建築様式が用いられていることがわかります。
どうやらコロッセオの観客席は、身分によって階層が決められていたようです。前列は地位の高い人たちのかぶりつき席、その後ろが騎士階級、その後ろに裕福な市民の席があって、最後列の4階席は一般市民と女性たちが座る場所になっていたと考えられています。
魅力たっぷり!ローマのシンボル・コロッセオで歴史探訪
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コロッセオがそびえるローマ歴史地区には、他にも「コンスタンティヌスの凱旋門」や「パンテオン」「トレビの泉」など数々の観光名所がひしめいています。自然災害や風化にも耐え、堂々たる姿を今に残すコロッセオはまさにローマのシンボル。あまりに大きいので圧倒されますが、全体を見渡しやすいので意外と短時間で巡れるところも魅力のひとつです。
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