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【文学】もう挫折しない!フランツ・カフカの小説の読み解き方とオススメ作品を徹底究明

チェコの誇る文豪フランツ・カフカ。「変身」「城」「審判」「掟の門」……歴史を変えた傑作を放った作家ですが彼の作品を読んだ人は知っているはず、そう!「未完作品ばっかりで、読みづらい!」でもでもカフカの不可思議な読書体験は経験して損無し。彼の書くのはグダグダ不条理から毒親、社会風刺のようなものまで……フランツ・カフカの世界の攻略方法をご案内しましょう。

大長編『城』をお手本に、カフカ攻略方法を解説!

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ハイ初っ端から難関を持って参りました。カフカ作品の中でもタイトルが有名な、未完の長編小説「城」です。難解でわけがわからず、しかも未完!中級者以上向けの本作ですが、カフカの楽しみ方を解説する上でいい感じの作品なので最初にご紹介することとしますね。圧巻の筆力!謎のシチュエーション、むかつく主人公!グダグダ感とふしぎな読書体験……解説して参りましょう。

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測量技師Kは「城」へたどり着けるのか?

……というとサスペンス仕立てっぽいですが、この作品、超のつくグダグダ作品です。読んでびっくり、圧倒的、グダグダ感。通常小説というものは多かれ少なかれ、作品の中で起こった「謎」や「事件」を追っていくことでストーリーが成立します。「城」でも、測量技師Kが城へたどり着けるのか?という謎がありますが、延々と回り道をした挙げ句に、未完!なんやねーん!

この主人公K(カフカ本人が投影されているという説が有力です)、主人公にあるまじき性格の悪さが特徴。ふてぶてしい!馬車に乗せてもらっておきながら馬車の持主に雪玉をぶつけたり、助手の名前を呼び分けるのが面倒だからと「お前たちのことを同じ名前で呼ぶ、2人1組で行動するんだ」と言い放つなど。でもこの主人公の不可解さも、カフカ作品のふしぎな魅力の1つ。

城に招かれた「永遠の測量技師」Kは、城からの指令を待ち、城やそこで働く人のこと、城下町の様子を探りますが……。未完でありながら多くの人を惹きつける本作。一体なぜなのでしょうか?

読むコツは?だらだらグダグダ感を楽しめ!

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「城」が時を超えて魅力的であり続ける理由は、一体何でしょう?一般に「城」は官僚機構・お役所の批判の寓話と言われています。しかし、お役所仕事を寓話化しただけでなく「しょうもなさ」を楽しむことができる、どこか喜劇的な感じを覚えることができるんですよ。事実「城」は「なんでやねん!」の連続です。

カフカの文学革命は「ありえないこと(シチュエーション)を、緻密なリアリズム描き、ありえなそうなのにありそうな世界として昇華させた」こと。「城」のグダグダは退屈なように感じられるかもしれませんが、読みはじめるとその筆力に驚かされます。圧巻の筆力で描かれる世界に、まずは何も考えず身を任せる……それがカフカ作品攻略のコツの1つ。

カフカ作品を読む時、私たちは迷宮的世界をさまようこととなるのです。答えも出口もない迷路。何を探し求めているかもわからず、カフカの描く緻密で理不尽な世界を私たちは味わいます。そんなカフカ作品の中でとっつきやすいものを、次の章から一挙紹介・解説です!

カフカの描く毒親もの短編!?『変身』『判決』

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ここから先はとっつきやすいカフカ作品をあつかっていきましょう。カフカはその生涯を通じて父親の呪縛に苦しみました。そんな彼の放った「毒親もの」作品2つをご紹介。毒親育ち人間の思考回路や行動パターンを文学的に昇華した傑作です。完璧な冒頭文でみんな知ってる『変身』、そしてカフカが作風を確立し、文豪カフカになった決定的作品『判決』。どんな小説なのでしょう?

大人のひきこもり「5080問題」を先取り?名作『変身』

 ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた

(フランツ・カフカ『変身』原田義人 訳)

この完璧な冒頭で有名な『変身』。シチュエーションはこの冒頭1文に集約されています。醜悪な虫となったザムザ。対応に困り果てる家族。稼ぎ手の息子ザムザを失った一家の様子が圧巻のリアリズムで描かれ、茫然と虚脱するラストが待っています。しかしカフカはこれを喜劇として書き、執筆中爆笑していたとのこと。他の人に読ませたら悲劇性に泣く人まで出て「解せぬ」となったそうですが……。

この後味の悪すぎる作品をどう読み解くか。カフカ作品の魅力はたくさんありますが、その1つは、多様な読み解きや解釈ができること。この作品、ひきこもりの大人の暗喩としてとらえることもできるんですよ。現在5080問題として社会問題化している大人のひきこもり。2019年には悲劇的な事件も起こりました。

労働力にもならず「飯風呂寝る」しかできなくなった大の大人。両親や妹は対応に困惑し、最終的には憎悪のようなものすら抱きはじめます。父親の起こすある「象徴的な行動」から先は加速度をつけて物語はある壁を突破することに。ザムザは悪ではなく、ただやむを得ない理由で家から出られないだけです。そんな彼に対してとる家族の行動……決して明るい作品ではありません。身につまされる部分もあります。しかし暗喩に満ちた作品として、読んで決して損ではありませんよ。

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毒親に育てられた子どもの行動はまさに……『判決』

毒親により支配され、人格否定され続けて育った子ども。人でなしの親に苦しみながら、おとなになってからも親の生活援助や金銭の提供、介護などを黙々と行い、自分の中で不満や不幸を抱えながらも、永久に親の支配下で人生を送る……。ふつうの家庭に育った人にはわからない感覚です。しかしこれをカフカは見事に寓話化しました。それが『判決』です。

この作品、毒親育ちの方や、毒親育ちの人の思考が理解できない方にぜひ読んでいただきたい名作。まさしく主人公の青年の思考回路は、毒親育ちの子供のそれそのものなのです。事業を発展させ、婚約者との結婚式も目前に迫り、まさに順風満帆。ただ彼を生み育ててくれた父親が……。主人公は父親を愛しいたわり、やさしく接します。そんな息子に向かい父親はある「判決」を下すのです――。

主人公の発する最後のセリフは、読む人すべてに衝撃を与える一言でしょう。彼はなぜこんなことを言うの?と思うか、あるいは「わかるなぁ」と感じるか。毒親育ちの子供の思考回路を見事に描ききった名短編。どこか『変身』につながるところのある作品です。

まだ簡単でおちゃめ(?)青空文庫でも読める、カフカ入門向け短編3作品

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最後に、入門者向けなカフカの短編をご紹介。カフカの作品は一般に、フシギでなんとなく難解、未完でバッドエンドという感じですが、大丈夫!ここに紹介している短編はちゃんと完結した小説です!ちょっとおちゃめな作品、妄想ふくらむ傑作、真剣に考え込んでしまう寓話……筆者イチオシのカフカ短編3つをご紹介。

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